1:2013/12/09(月) 11:21:51.00 ID:
(改)乃木坂46バトルロワイヤル

※ファンの方が創作された小説です。 
2:2013/12/09(月) 11:28:55.47 ID:




ゴォォ―――…

高速道路を進む、ニ台のバス。

その車中には、夏の全国ツアーの最終公演を終えたAKB48の公式ライバルグループ
『乃木坂46』のメンバー達の姿がある。

二台のバスのそこかしこでは興奮冷めやらぬメンバー達の声が聞こえる。
最終公演は大成功の内に幕を閉じたのだ。

しかししばらく進む内に、やがてそんな話し声も聞こえなくなった。

その時ふいに、前方のバスが道を曲がり…
8:2013/12/09(月) 11:34:51.91 ID:
次に目を覚ましたメンバー達が見たものは、教室のような場所であった。

高々と太陽が昇る窓の外には…自然の景色が見える。
教室のようであるが、それは山にあるらしかった。
次々に目を覚ましだしたメンバー達の口から驚きの声がもれる。

番組のドッキリなのか…キャンプの企画か…。
なにひとつ状況を把握することの出来ないメンバー達は、まだ眠りの覚めやらないぼんやりとした頭を振るしかなかった。
これが、想像を絶する冒険の始まりであるとも知らずに―――。


その時、
教室のドアが開きストールを巻いた一人の男が入って来た。
9:2013/12/09(月) 11:37:21.38 ID:
「おはようございます。」
乃木坂46を統括している、ソニーミュージックの今野氏だ。
「みなさんにはこれから、戦いをして頂きます。」
14:2013/12/09(月) 11:43:25.14 ID:
誰も言葉を発しない。
それどころか、息の音もしない程の沈黙が張りつめている。

「誰もが納得し得るセンター…本当のセンター…。それを決めることは、乃木坂46の今後の飛躍のためには必要不可欠です。
 ですから、正真正銘、生きるか死ぬかの力の比べ合いによってセンターを決めます。これなら誰からも文句は出ないでしょう。」
今野氏は続けた。

「…異存はないですね?では、ルール説明に移りたいと思います。」
15:2013/12/09(月) 11:45:59.37 ID:
「みなさんの机には一人に一つリュックサックが置いてありますね?
 その中には食料や地図などが入っていますが武器は入っていません。中身を開けて確認してみて下さい。」
恐る恐るメンバー達がリュックサックを手に取る。

「…では、みなさんはどのようにして戦うのか。
 これを、」
今野氏は教卓の上に紫色の錠剤の入ったビンを置いた。
「飲んで頂きます。」
17:2013/12/09(月) 11:49:10.70 ID:
「これは、飲むと各々それぞれに見合った特殊能力が表れるという、我が社をあげて特別に開発した薬です。」
ここで初めて、どこかで小さく息を飲む声があがった。
「1時間後からその効果が表れますので、名前を呼ばれた順にここを出る前にまず隣室でジャージに着替え、そしてこれを飲んで頂きます。」
そして今野氏は教卓の下から冊子の束を取り出した。

「自分の能力についての説明書を配布するので、必ず1時間経ってから読んで下さい。なお、付属品のある方はその用途についてもしっかり理解して下さい。
 そしてその力を使って、戦いをして頂きます。」

「…ただし。」
18:2013/12/09(月) 11:51:02.22 ID:
「強い力と弱い力。みなさんの能力には間違いなく、差があります。」
続く今野氏の言葉に、教室のあちこちから小さく声がもれた。

「…ですので今回はそのことに対する特別措置として、強いメンバーに対して不可避の攻撃を与える事が出来る『権利』を有するメンバーがこの中にいます。
 多少の制約は伴うものの、それはかなり強い力です。
 つまり、もし強い力を持ったとしても、自分に対して死の一撃を与えられるメンバーはいるかも知れないということです。」
今野氏はその言葉が充分にメンバー達にしみ込むのを待ってから言った。

「…では、ゲームの始まりです。
 秋元真夏、来て下さい。次の人は前の人が出発して5分後に出発します。」
20:2013/12/09(月) 11:54:59.51 ID:



…数時間後――――

PM 14:50


小屋からそれほど離れていない林の中。
その林からすすり泣く声が聞こえる。

見ると、一人のメンバーが林に入ってすぐにある斜面の木にひっかかっている。
秋元真夏だ。
彼女は名前の順で一番に名前を呼ばれて小屋を出たあとすぐ、この林の斜面で足を踏み外してしまったのだ。


秋元「なにがなんだか分からない…戦いなんて…そんなの私には出来ないよ…。」
彼女は怯えきっていた。
秋元「私はドジだし力も運動神経もないから…どうせすぐやられちゃうに決まってるよ…だったらいっそ…。」
彼女が運良く木にひっかかっていたリュックサックから腕を抜こうとした…
その時、
21:2013/12/09(月) 11:58:09.91 ID:
「なにやってるの?」
背後で突然声が響いた。

???「…それ、もしかして断崖絶壁から落っこちそうとか思ってる?下まで2メートルもないよ。」
22:2013/12/09(月) 12:00:29.79 ID:
…秋元真夏が斜面で足を踏み外した直後、ゲーム開始序盤――――

PM 12:30


伊藤万理華に支給されたのは一台のノートパソコンだった。
彼女は小屋を出て逃げ始めてすぐにそのことに気づいた。

伊藤(重い…!重いよこのリュック!でも止まっちゃだめだ…止まったら誰かに…どこか隠れる場所!)
彼女は辺りを見回し、山小屋の裏手に古びた井戸を見つけた。
そしてその中に入りみふたを閉め、息を殺しリュックサックを開けると…

伊藤(ノートパソコン…!?どういうこと!?)
彼女は訳が分からぬまま、隙間からもれる明かりに付属品の説明書をかざし読んだ。

伊藤(このパソコンは…メンバー間で攻撃がなされた時…その実況を読むことが出来る…また…メンバーそれぞれの能力を知ることが出来る…!
 待って、これってさっき薬飲んだ意味あるの…!?もしかして今すぐ…!)

(電源ついた!!!…よし、まずはみんなの能力を見なくちゃ!!!)
23:2013/12/09(月) 12:01:45.51 ID:
秋元「…花奈!?花奈の声!?ねえ助けて!降りられないの!」
???「…しかも下は落ち葉の山だから着地に失敗したとしてもクッションになってくれるはずだし。まあ、いいや。ちょっと待ってて。」

突然現れた中田花奈が何ごとかを唱える声が聞こえたとたん、秋元真夏は自分がつかまっていた木が大きくしなるのが見えた。

秋元「怖かったよ…!」
地面に降りた秋元は腰が抜けたようにその場にへたりこみ、堰を切ったように泣き出した。
24:2013/12/09(月) 12:06:43.13 ID:
―――同じ頃…

PM 15:00


畠中清羅。大和里菜。
普段から仲の良い彼女達二人は、どちらからともなく山小屋を出たそばで待ち合わせをして当然の如く行動を共にしていた。

畠中「うーん…なんか結構歩いたような気するけど、うちら一体どこ向かってんだろw」
大和「えーっとね、ちょっと待ってね今地図見てあげる…。なんか、小屋のあった山?をどんどん下山してるっぽい。」
畠中「下山してたとかw全然気づかんかったw結構緩やかな山なんかなぁ…?まぁ適当にこのまま進み続けよwってかさぁ…。」
25:2013/12/09(月) 12:08:14.24 ID:
しばらくして秋元真夏が泣き止むのを見て中田花奈は言った。

中田「ここ、最初の小屋のすぐ近くなんだけど…まさか真夏今まで、ずっとここでぶらさがってたわけじゃないよね?」
秋元「うん…ぐすん…最初に呼ばれて小屋を出たあとすぐに転んじゃって…。」
中田「もう3時間経ってるけど…。」
秋元「だって…ぐすん…花奈はずっとこの近くにいたの…?」
中田「うん。みんなの様子をうかがおうと思って。」
秋元「ぐすん…どうしてそんなに冷静でいられるの?」
中田「正直、そろそろこれくらいのサプライズはあるんじゃないかなって思ってた。
   アイドルはただ踊らさられるだけじゃなくてもっとメタな視点を持たなきゃ。」
淡々と語る中田の横顔を見ながら、取り乱していた秋元は自らも落ち着きを取り戻していくのを感じた。
26:2013/12/09(月) 12:09:44.54 ID:
畠中「りなの能力ってなんなん?w」
大和「うん、里菜の能力はね…《トマト》…トマトが栽培出来るの…。」
畠中「トマト栽培!w」
大和「そうなの!りなもショックだったの!だから続きも全然読んでない…。せいらの能力はなんなの?」
畠中「うーんとうちの能力はね…これなんだけどさぁ実は読めないんだよねw」
畠中は説明書の能力名を指し示した。

大和「ええっ何これ!私も読めないよ…《ダイトキバケ》???
   説明文はえぇと…その名の通り《ダイトキバケ》を起こすことが出来る能力…。
   これ、あんまり使わないでいた方がいいんじゃない?」
畠中「うん、うちもそう思う。だからとりま、うちらは歩き続けよw」


―――その時二人の歩いている遥か後方には、同様に行動を共にしている二人組の姿があった…
28:2013/12/09(月) 12:14:03.83 ID:
中田「ところで…真夏は『権利』持ってる?」
秋元「あ…まだ説明書もなんにも読んでなかった…ずっとぶらさがってたから。うん、ちょっと待って、見てみるね。」
涙を拭った秋元が自身の説明書を読み上げた。

秋元「私の能力は…《釣りったん》だって。ズッキュンした相手を一時的に麻痺させることが出来る…。
   そして『権利』は、持ってないみたい。」
中田(そう…。真夏なら推されてる方だしもしかしたら『権利』持ってるかなって思ったんだけど…。)
中田は唇を噛み締めた。

秋元「…ねえ、さっきどうやって私を助けてくれたの?花奈の能力は?」
中田「あぁ、うん。分かった。じゃあ少し離れた所に立って。」
30:2013/12/09(月) 12:19:14.43 ID:
…畠中清羅、大和里菜がまだ山小屋を出発すらもしていない頃――――

PM 13:30


鬱蒼と広がる森の木々の中、ひときわ高く巨大な木の上に、何か動くものがいる。
生駒里奈だ。

生駒「ふーっ。しばらくはここでしのげそうだってばよ…。」

生駒の能力は少年漫画の登場人物並みの身体能力になる《少年漫画》。

生駒は比較的最初に山小屋を出たあと、あまり力がないため森の中で立ち往生していた。
そんな時一時間が経過し能力が覚醒したため、とりあえず腰を落ち着けようと見渡す限りで一番高いこの巨木に登ったのだった…。

「ここまで登れば誰にも見つからないだろうしね…。さて。こうやって落ち着いたからには考えなきゃ。
 うちの大好きな乃木坂のメンバー達が、戦い合わなきゃいけないこの現状を…。」
31:2013/12/09(月) 12:21:06.75 ID:
―――生駒里奈が巨木に腰を据えたと同じ頃…


この戦いに、最も乗り気なメンバーがいた。
井上小百合だ。
彼女は最初こそ怯えはしたものの、山小屋で今野氏から説明を聞く内に、
これはもしかして…!
はっと息を飲んだ。

そして前半に名前を呼ばれた彼女ははやる心を抑え、誰にも邪魔されそうもない場所を求めて必死にさまよった。
その結果森を越え、誰よりも早く島の北西部、滝つぼの洞窟まで辿り着いていたのだった。

そして今まさに、震える手で説明書を開いた。
「そんな…。」
32:2013/12/09(月) 12:21:58.94 ID:
???「あれは…。」

井上小百合が滝つぼの洞窟に辿りついてから1時間ほどが経った頃。
生駒里奈のいる巨木の先、河川敷の茂みに何者かの姿があった。

どうやら身を隠しているようだ。
その視線の先には、危なっかしげに歩く小さな人影がある…。

???「よし…。あとをつけてみよう。あ、一応。能力発動…」
33:2013/12/09(月) 12:23:46.50 ID:
「じゃあ、いくよ。」
そう言うと中田花奈は手を高く掲げ早口で言葉を唱えた。
中田「なかだかなかだかなかだかな!…これくらいいでいいカナ?」

秋元真夏には中田が掲げた手を自分に向けるのが見えた。
その瞬間、

秋元「!?」
彼女は体の周りに得体の知れない何かが出現したのを感じた。
中田「ちょっと痛いかも知れないけど。」

そして中田が広げた手のひらを閉じると…秋元はぎゅっと体がきつくしばられるのを感じた。
34:2013/12/09(月) 12:26:42.94 ID:
一通りメンバーの能力を読み終えたあとも、伊藤万理華はまだ井戸の中にいた

伊藤(あたしには攻撃能力も防御能力もない…。こうしてパソコンをいじることだけ。もし外に出て誰かと会ったら…。)
   …でも逆に今のこの状況だって…。今にも誰かが上の蓋を開けたらと思うと…。)

ゲーム開始直後に井戸に入ってから、せめぎあう二つの思いの間で身動きをとることが出来ずにいたのだ。

「あぁ…もう…ああああああ!!!」

―――その時、彼女が潜む井戸に近づく人影があった…
35:2013/12/09(月) 12:27:56.02 ID:
―――伊藤万理華が井戸の中で声をあげたと同じ頃…

PM 14:00


「うおおおおおおおおおおお!!!!!」 

滝つぼの洞窟に鳴りひびく異様な雄叫び。
井上小百合であった。

あのあと。

「そんな……。最っ高!!!」
彼女の目は、その手に握られている説明書の能力名《スーパー戦隊》に釘付けになっていた。
36:2013/12/09(月) 12:29:33.14 ID:
井上「やっぱり井上「特殊能力は…それぞれに見合ったものが与えられるって…その言葉の通り考えれば、
   今までさんざんスーパー戦隊大好きをアピールをしてきた私にはそれが与えられるに決まってる…!あぁ…ずっと夢だった…。
   …でも、まずは、この戦いに勝利しなくちゃ。」
ようやくそこに思い当たった彼女は、勝利を手に入れるため努めて冷静になろうとした。

「うん…センターになったら…私をモチーフにした戦隊ヒロインをデザインして、それを商品化するってのも悪くないかも…。夢が広がりまくり…ふふ…。」
37:2013/12/09(月) 12:31:19.53 ID:
生田「…でね、だから今度、そのお店に行ってみようと思うの!」 
中元「へぇー!っていうか、それなら今度いっしょにいこうよ!」
二人は畠中清羅、大和里菜の遥か後方を歩いていた――――

PM 15:00


生田「あ!それならこの前見つけた」
中元「てかさっ!」
俄然目が輝きだした生田をさえぎって、中元が言った。
38:2013/12/09(月) 12:34:48.12 ID:
「そろそろ…このゲームに関係した話しようよ!生ちゃんの能力はなに?」
「あぁ…それもそうだね。」
生田は言った。

生田「私の能力は、《ハモり芸》。誰かが何かを言おうとした時、私が歌を被せるとしばらくその言葉が言えなくなっちゃうの。
   だからみんなの能力発動!とかの声をかき消せば、しばらくは能力封じ出来る能力なの!」
中元「能力封じ…!それってすごいね!それじゃ、私の能力は何か分かる?」
生田「ひめたんなんて《ひめたんビーム》以外ありえないでしょ!ね、だからさ、いっしょに同盟組もうよ!」
39:2013/12/09(月) 12:35:57.64 ID:
―――同じ頃、河川敷では…

???「飛鳥の能力は攻撃か防御、どちらかに特化したものなんじゃない?
    そうじゃなきゃ、華奢な飛鳥がこんなに大胆に出歩ける訳がない。現にこうして、後に出発した私が追いついてしまうくらいなのに。
    しかも私が姿を現した時だって身を隠すどころか逃げようとする気配すらなかった。」

???「…そういうななみさんこそ、見晴らしのいいこの川沿いの道を選んで歩いて来たってことは私と全く同じことが言えるんはずなんじゃ…?」
41:2013/12/09(月) 12:37:35.96 ID:
「どうしよう…色々実験しなきゃ。まずどの技から使ってみよう…。」
実に一時間が経った頃、ようやく興奮もおさまった井上小百合はつぶやいた。

この能力は使える力が一つではなかった。
スーパー戦隊ものの代表的な力の内5つを使えることが出来るのだ。

井上「よし…まずは君に決めた!能りょ…あっ、そうだ!」
彼女は何やらリュックサックをゴソゴソと探したかと思うと、
井上「今回のツアーにも持って来てたんだけど… あ、捨てられてなかった!これがあった方がさまになるもんね!よし!」
43:2013/12/09(月) 12:41:17.05 ID:
「…それにななみさんがこっちに来るだろうってことは、誰でもわかりそうなことだと思うよ。」

橋本奈々未と齋藤飛鳥。
両者は、森の西南の河川敷で対峙していた。

齋藤「だって小屋から出て、一番木とか草とかがない虫がいなそうなルートを辿ると植物が全然ないこの川沿い道になるのは必然的だもん…!」
橋本「なかなか的確なこと言ってるね。でもそうやって、隙を作ってペラペラ喋っちゃっていいの?油断してると私が先制攻撃しかけちゃうかもしれないよ?」
負けじと橋本が言い返す。

齋藤「いやいやななみさん…それはこっちの台詞です、よ!能力発動!」
齋藤がウインクをした。その瞬間、

ズンッ

橋本は自身の体に凄まじい風圧を感じた。
しかし…

橋本「…やっぱりね。かなりの攻撃力みたいだけど、効かないよ。」
軽く服を払って橋本は言った。
44:2013/12/09(月) 12:42:56.30 ID:
(…あーもうだめだ!ここにいても何も不安はなくならない!出よう…!)

―――橋本奈々未が自身の体に凄まじい風圧を感じたと同じ頃…
山小屋の裏の井戸の中では、
長い時間をかけやっと決意を固め立ち上がった伊藤万理華がいた。

伊藤(まだ誰も誰かを攻撃していないみたいだから…外は安全なのかも…。それにここ、なんか臭いし…。よし!)
彼女が井戸の蓋に手をかけた瞬間、

ピコン!

どこかで攻撃がなされたことを告げる新着音が鳴った。
(そんな…!!!)
45:2013/12/09(月) 12:44:52.83 ID:
橋本「…飛鳥に出会う前から、すでに能力発動してたから。」
   私の能力は《理論武装》。その名の通り筋の通ったことを話せば話すほどそれがそのまま私を武装してくれる壁になる。
   しかも先手をかければその効果はより強まる…。」

齋藤「なるほど…さすがななみさん。…でも!」
   分かってたよ…!だってなにもない状態でいきなり話しかけてくる訳なんてないと思ったから…だから…ごめんなさい!」
齋藤は橋本に駆け寄りながら言った。

「このゲームが始まってからずっと、誰かに会うのが怖かった…。でも、ななみには会いたかったかもしれない!おれのななみ!」
46:2013/12/09(月) 12:46:50.46 ID:
抱きついてきた齋藤を笑顔で見つめながら橋本が言った。
橋本「大丈夫だよ。私の《理論武装》はかなり強いから。飛鳥の能力はどんな能力なの?」
齋藤「んーと能力名は《扇風機》。何か言われたことに対して言い返せば言い返す程攻撃力が強くなって、最後にウインクすればそれを放つことが出来るの…。
   でも、そんなのもうどうでもいい!ななみーななみー。いっしょにいよぉ。」

橋本(困ったなぁ…私は本来なら単独行動派なんだけど…でも。)
橋本は齋藤の小さな頭を見下ろしながら考えた。
橋本「(でも実際…飛鳥の秘めた力は侮れない…。)分かった…じゃあ、飛鳥はこれからなにをしたい?」

「あたしは…まあやを探したい!」
48:2013/12/09(月) 12:47:58.09 ID:
―――橋本奈々未と齋藤飛鳥が徒党を組んだと同じ頃…

???「とうとう、ぶつかったね。いつかぶつかるんじゃないかって思ってた…。」
???「そうだね…。」

二人がいる場所から数キロ先の森の南西の崖では、新たな戦いの火ぶたが切って落とされようとしていた…
51:2013/12/09(月) 12:54:31.80 ID:
生田「ね!同盟組もうよ!
   ひめたんがまず相手にビーム飛ばして、物陰からうかがってる私が相手の能力封じて、勝利をかっさらって、って!」

中元「うん…いいかも…!それ…それって、成功したらもしかしてうちら最強?」
生田「相手を誰にするかによっては、勝率はかなり高いはずだと思うの。でもそれを説明する前に…ふーっ!ちょっと疲れた。休憩!」
そう言うと、生田はリュックサックをおろした。

中元「またぁ…?もう何回目?まぁ…いいけど。」
中元はその隣にしぶしぶ腰掛けた。

中元「相手を誰にするか、って…生ちゃんには相手を誰にした方がいいかなんて、何で分かるの?それにもしそれが分かってたとしても、
   みんなが今どこにいるかなんて、全然分かんないよ?」
生田「あのね、ひめたんの他にもう一人…能力が完璧に予測出来る人がいるんだよね。それでその人がどっちの方向に行くのかも。」
52:2013/12/09(月) 12:55:25.52 ID:
―――生田絵梨花、中元日芽香の二人がいる場所から遥かに西方の森のはずれ…

木立もまばらになりやがて森が終わる開けた空間に、一人のメンバーの姿があった。
高山一実だ。
ひどく思い詰めた表情をして前方の平原を見つめている。

そこに、彼女には気づくことのない幾人かの人影が迫っていた…
53:2013/12/09(月) 12:56:31.52 ID:
「…で、これからどうするか。」
…生田絵梨花が山の中腹に腰掛けたのと同じ頃―――

PM 15:10


秋元真夏をしばっていた見えない鎖《なかだかな》を解いたあと中田花奈は言った

中田「うちさっき、真夏と会うまでみんなの様子をうかがってたって言ったでしょ?
   あれはね…まず、山小屋で順番待ちしてた時、いざ説明が終わったあとはスタッフさん達段取りにバタバタしてて全然待ってる人の方見てなかったじゃん?
   まいやんに話しかけてるスタッフさんもいたけど。あ、そっか真夏は最初に出発したから分かんないか。あんま見てなかったの。だからうち、ずっと地図見てたの。」
そう言うと中田は地図を取り出した。

「まず、うちらが今いるのはここ…最初の山小屋の裏にある斜面の下。」
中田は山小屋のすぐ上を指し示した。
54:2013/12/09(月) 12:57:56.45 ID:
(花奈が…!花奈が真夏を攻撃した…!)

二人の頭上の先、
山小屋の裏の井戸の中で、伊藤万理華は先ほどノートパソコンに表示された文字を信じられない思いで見つめていた。

伊藤(真夏…真夏からは反撃の気配が全然ない…!ってことは!真夏…!)
55:2013/12/09(月) 12:58:55.77 ID:
中田「それでこの山小屋の近くにはわき水があって、それが川になって、山と森を二分して南西方向に海まで流れてるんだけど…
   だけどこの川、上流の流れが結構強いの。で、下流にいくに従って川幅はどんどん広くなるし…
   だから西に進むためには上流にある唯一のこの吊り橋を…」

中田は山小屋の左下辺りを指し示した。

中田「…渡らなきゃいけないの。地図を見てそのことに気づいて、だから外に出てからずっとそこ見張ってたの。」
56:2013/12/09(月) 13:00:38.81 ID:
…ピコン!…ピコン!…ピコン!

暗い井戸に電子音がひびく。

長い時間をかけようやく意を決して井戸を出ることを決めた伊藤万理華は、すっかりその意志をくじかれていた。
中田花奈の秋元真夏に対する攻撃をかわぎりに、次々と攻撃がなされたことを告げる新着音が鳴っていたのだ…

伊藤(どうして…どうしてみんな…。)
画面を見ながら彼女はぽろぽろと涙をこぼした。

伊藤(花奈が…こんな恐ろしいゲームに乗ってしまった…真夏を攻撃して…しかもこのすぐそばで…多分真夏は死んじゃって…。)
57:2013/12/09(月) 13:01:44.92 ID:
「山小屋を囲んでる林にある斜面の下が今うちらがいるここ。小山の下。で、この斜面なんだけど…。」
中田は上を見上げて言った。

中田「見ての通り、そんなにすごい傾斜じゃない。だけど見て…地図の標高を見るとすごい絶壁になってるでしょ?
   それはね、この小山のことなんじゃなくて…小山の乗っかってる方の山のことなの。そっちの山の北側は切立った崖なの。
   だからここの先には崖がある。真夏はそこまで落っこちなかったから、本当に運がよかったんだよ。」

中田「でもねこの斜面の下、山小屋の裏からは全然見えないの。
   だから皆はこっちに進むのは危ないから諦めて、反対はかなり緩やかだしそっちに下るか、小山の下にある吊り橋を渡って森へ行くか…。」

中田は地図見つめながら言った。
58:2013/12/09(月) 13:03:30.71 ID:
伊藤(そのあとにあしゅがななみんに攻撃して…ななみんが防御して…ひなちまが…あんなに優しいひなちまがろってぃーを攻撃して…。)
震える指でスクロールする。

伊藤(今は…玲香とみさみさが戦ってる…。)
その時、

ピコン!

(また!また戦いが…!そんな…!)
59:2013/12/09(月) 13:04:36.87 ID:
中田「こっちに来る人なんてまずいない。一応さっき小屋の裏確認してみたけど、井戸があっただけだったし。
   その井戸も音がしなくて鍵が閉まってたし。だからみんなはこっちには来なかったはず。
   転がり落ちちゃった真夏は別として。」

「…花奈は、なんでそれだけ分かってたのにこっちの崖の方に来たの…?」
秋元は不安そうに尋ねた。

中田「うん、それはね…自分で見た方が早いかもしれない。」
60:2013/12/09(月) 13:08:56.97 ID:
―――中田、秋元、伊藤のいる場所から南に数キロ離れた山の中腹。

そこでは中田の読み通り、橋を渡ることのなかったとあるメンバー同士の戦いが始まっていた…

???「負けへんでっ!」
???「ビームは出ないとか言ったけどね、ビームはほんとに出るんだよ!」
61:2013/12/09(月) 13:11:04.22 ID:
「ねぇ、りな。」
同じ頃、
畠中「さっきからずーっと原っぱだし、うちらこのまま進み続けても、何もないような気がするんだけど…w」

あれから。

畠中清羅、大和里奈の二人は特に能力を使うこともなく、特に誰かと出会うこともなく、
雑談を交わしながらただひたすらに歩を進め続けていた。

大和「うーん…そうだね…りなもそう思う…。」
畠中「あのさ…引き返さん?w」
畠中が地図を取り出して言った。
62:2013/12/09(月) 13:12:19.48 ID:
畠中「うち島の反対に行きたいんだよね。ほらここの灯台とかめっちゃ気になるやん。けどさ、ほら、せいら達が今いるとこって、」
   このまま真っすぐ行っても海岸に出るだけなんだよね…w」

大和「えぇー…でも、りな海見たいけどなぁ…今すぐにでも海が見たい…海見ながら海岸沿いに向こうまで行けばよくない?」
畠中「海岸の横にかなり太い河あるやん?この河渡れないから向こういけないし。だから向こう行くためには、もっかい最初のとこ戻って、この橋渡る以外ないんだよね…w」
大和「えぇっそうなの!?なんでもっと早く言わないの!?」
畠中「え、いやさっき気づいたwだからさぁ…」
元来た道を振り返った畠中の目が、その時なにかを捉えた。

畠中「…え?なにあれw」
大和「なにが?」
畠中「ほら、ピカッ、って…w」

…この時畠中が謎の光を目撃したことが、後にゲームの前半戦を大きく左右することとなる――――
63:2013/12/09(月) 13:13:34.42 ID:
「強い…強すぎる…!!!」
瓦礫の山の頂上に、興奮覚めやらない井上小百合の姿があった――――

PM 16:00


滝つぼの洞窟で自身の能力に歓喜した彼女は、最初に選んだ飛行能力を使って場所を白い花の咲く滝の上の草原に移していた。
辺りは一面粉々になったもので溢れ返っている…。

井上「よし!もういっか…あれ?あー、もう終わりか…。」
彼女の能力にはあるルールがあった。そのルールとは、
井上「はぁ…一回に能力が使える時間は3分…その後はインターバルが15分…。まーた時間つぶさなきゃいけないのか。」

彼女の能力はスーパー戦隊の技が5つ使えるというものであるが、
技が複数使えるという大きなアドバンテージのかわりにビハインドとして時間の制限があったのだ。
64:2013/12/09(月) 13:14:47.43 ID:
井上「3分って…短すぎるよ…。」

彼女はそのことに関して少なからず不安を抱いてはいたものの、

井上「まぁ…でも…きっと問題ないよね…最初の一撃で倒しちゃえばいいんだから…痛くない方法でね…。」
瓦礫の中の壊れたギターに腰掛けつぶやいた。
その時、

カタッ

背後で物音がした「誰!?」
しかし振り向いたその先には…

先ほどと何も変わらず、ただ草木が広がっているだけであった。そして前方には滝が…
…しかし彼女はほんの一瞬、目の端にその姿を捉えた…ような気はしていた…が…しかし…

井上「そんなバカな…。」
時計を見て呆然とつぶやいた。
65:2013/12/09(月) 13:16:12.22 ID:
「…で、まあやを探すって。なにかツテはあるの?」
「ううん、なんにも!」

―――井上小百合が時計を見たと同じ頃…

森の南、川沿いの広い道を歩く人影があった。
橋本奈々未と齋藤飛鳥だ。


橋本(…まぁ、それも予想の範疇。これからどうしよう。)
橋本は思案した。
橋本(河は下流に向けてどんどん下降気味だけど私達が今歩いてる道はこのまま続いてるから、このまま行けば崖みたいになってくるだろうし。
 そのそばを歩くのはあんまり気が進まないんだよね。でもかと言って森の中に入るのは嫌だし…あれ?)

「ちょっと待って。」
突然立ち止まった橋本が言った。
橋本「なにか臭わない?」
齋藤「え…?別になんにも…。」
橋本「すっぱい…いや甘い…いやすっぱい…いや甘い…いや…。」

(…ななみさん、鼻がよすぎて、とうとう壊れちゃったのかなぁ…?)
66:2013/12/09(月) 13:17:16.67 ID:
―――橋本奈々未が何かの臭いに気づいたと同じ頃…

「どうしよう…。」
つぶやく声が聞こえる。高山一実だ。
高山がこの森のはずれに辿り着いてから、1時間が経過していた。

「やっぱり…。」
平原の先を見つめ高山が動きかけた、その時だった。

ガサガサッ

後方の茂みから物音がしたかと思うと一人のメンバーが姿を現した「ずー!!!」
「ちーちゃん!!!」
二人が駆け寄る。
続いてまたしても人影が現れた「ろってぃー!!!陽菜ちゃん!!!」

高山「…よかった!ずっと待ってたんだよ!みんなちゃんと約束したこの場所に来られたんだね!あとは…」
67:2013/12/09(月) 13:18:24.99 ID:
高山一実、斎藤ちはる、川村真洋、川後陽菜。

彼女達は、山小屋の中でとっさの機転でメモを回し「森のはずれ」で落ち合う約束をしていたのだ。
「…あとは、言い出しっぺのじょーさんだけだね!」
その時、

大きな音とともに平原に広がる湖から突然何かが出現した。

???「ざっぱぁぁぁ!!!」
「敵!?」「なに!?」「わぁぁぁ!!!」
???「…みんな会いたかったよぉ。」
70:2013/12/09(月) 13:27:29.53 ID:
―――平原の湖から突然何かが出現したと同じ頃…

「はぁ、はぁ、…い、いい加減に降参しろー!」「ほ、ほら息切れしてるじゃん…おばさんはあんま無理しないほうがいいよ…!」
桜井玲香と衛藤美彩の戦いは、文字通り泥仕合に発展していた。
…1時間程前―――

PM 15:10

衛藤「とうとう、ぶつかったね。いつかぶつかるんじゃないかと思ってた…。」
桜井「そうだね…。」
桜井玲香と衛藤美沙は森の南西の崖で対峙していた。
71:2013/12/09(月) 13:28:31.52 ID:
重い沈黙が立ちこめる。
そんな中さきに口火を切ったのは衛藤であった。

衛藤「…思えば私達、まるで反対の道を歩んできたね。」
桜井「…。」
衛藤「私は、ずっとアンダーで下の子達や悔しい思いをしてる子達を支えてきた…。それに比べ玲香は、」
桜井「私だって…。」
衛藤「キャプテンってだけじゃなく、ずっとずっと福神で…。そして肝心のキャプテンの仕事も、しっかりこなしてるようには見えなかった…。」
桜井「私だって…私なりに葛藤はあったんだよ。それでも、頑張ってきたつもり。みさには分からなくても頑張ってきたんだよ!」
72:2013/12/09(月) 13:29:49.22 ID:
「分かってたよ。」
衛藤は桜井から顔をそむけ崖を見下ろしながら言った。
衛藤「分かってたけど…でも…私ならもっと上手くやれる…そう見えてしまう自分もいたんだよ…。」
桜井「それは…。」
衛藤「…辛いことばっかじゃなかったよ、幸せなこともいっぱいあった…私はアンダーにちゃんと誇り持ってる…。」
桜井「…。」
「でもね。」
衛藤は振り返って言った。

衛藤「玲香だって分かってるでしょ…?私達は、最初は同じだったんだよ…お互い同じ会社にいて、同じように期待されて…。」
桜井「それは…。」
衛藤「同じはずだったはずのに…いつのまにか、差がつきすぎた。でももう、」衛藤はぎゅっとこぶしを握った。
「もう、変えられない過去にとらわれるのはこれで最後にするの…私はただ前に進むために、玲香を倒す!いくよ!玲香!」
桜井「うん…!」

二人「能力解放!《カボス》!!!」「能力解放!《ホイップ》!!!」
73:2013/12/09(月) 13:30:50.42 ID:
「どう?」
「む、むり…」
秋元真夏と中田花奈は山の北側の崖に来ていた――――

PM 16:00

「さっきも言った通り、この山は南側はかなり緩やかになってるんだけど、北側は傾斜も何もない切り立った崖なの。しかもかなりの高低差。」
「み、見るだけでゾッとする…。」
秋元はその場にへなへなとへたり込んだ。

「でも、見て、あそこ。」
中田はかまわず続ける。秋元は嫌な予感がした。
74:2013/12/09(月) 13:32:30.09 ID:
「あそこ…見えづらいんだけど、ほら。」
中田は指で望遠鏡を作って崖下に目を凝らした。
中田「すごいカラフルに見える部分があるでしょ?あれが何なのか。」
秋元「ね、ねえ…。」
中田「まず第一に、この崖から先は地図に全然詳しく書かれてないんだよね。隔絶されてる。だから、絶対に何かがあるはずなの。
   あと、今の所まだ誰もこっちにはいないはずだから安全ってのもある。」

秋元「…ね、ねえ!」
中田は秋元を振り返った。

秋元「ま、まさか…ここを降りるつもりじゃ…ないよね…?」
「…私の《なかだかな》は。」
ゆっくりと中田は言った。
中田「そこまでの伸縮性はないの…唱えた分だけつむぎだせる…だから…。」
秋元「だから…?」

中田「…バンジージャンプするしかない、カナ?」
75:2013/12/09(月) 13:33:39.92 ID:
ほんの一瞬のことではあったが、
見慣れた後ろ姿を見間違えることのないことは井上小百合自身が一番よく分かっていた。

井上(だってゲーム開始からまだ4時間…ってことは…たった30分で…どうやって…でも一番の問題は…。)
彼女は唇を噛み締めた。

井上(いつから見られてたんだろう…。もし3分ルールを知られたんだとしたら…まずい…。)
不意に涙が込み上げて来た。
井上(完全に不覚だった…!!!)

―――その頃崖の下では…

???「うわぁ…やばいよ…どうしよう…。」
???「どうだった…?」
???「あのね、さゆにゃんはね…この戦いに乗り気だと思う…だって目、すっごい輝いてたもん…。」
76:2013/12/09(月) 13:34:49.18 ID:
「うちの能力はね、《テレビゲーム》。」
そう言いながら斎藤ちはるはゲームで使うコントローラーを取り出した。

あれから。

無事に落ち合うことの出来た5人はたき火をおこすため、
元来た森の中に煙のもれない洞窟を見つけていた――――

PM 16:30

斎藤「これを使って相手をゲームみたいに操れる能力なの。
   でもそのためにはまず、このアダプターを相手に差さなくちゃいけないから結構近くに寄らないといけないんだけど。」
川村「なかなかに末恐ろしい能力やなぁ…まひろの能力はな、えーと…
  『フロントに攻撃を受けた場合、攻撃した相手の能力時における力を2倍アップで得られる』…っていう能力。
   あんまり意味が分からん!今は考えるとおでこがズキズキするわ…かずみんは?」
高山「えーっとあたしはね、声を自在に操れる能力、かな。て、てかさ、そんなことよりじょーさんの話が一番気になるよ!」
斎藤「そうそう!さっきのなんだったの?ほんとびっくりした…なんで湖なんかから出てきたの?」
「…あーっそれは話すとほんと長いんだけどね。」

たき火に手をかざし震えながら能條愛未が言った。
先ほど突如湖から出現したものは、最後に約束の森のはずれに現れた能條愛未であった。
77:2013/12/09(月) 13:35:54.39 ID:
「小屋を出てから森のはずれまでは、最初みんな橋渡ったでしょ?」
能條愛未は言った。

能條「あの橋渡ってあとはただ森を突っ切ればよかったんだよね…だっけどこれがまた難しくてさぁ…。全然まっすぐに進めてなかったの。で、気づいたら、」
能條は地図をゴソゴソと広げ森の上を指さした。

能條「ここ、北にずれて森の上に出ちゃったてたんだよね…。で、そっから森に戻ろうとしたんだけど戻ってたらどのくらい時間かかるか分かんなかったし…。
 そしたら、遠くに滝が見えて。で、地図みたらその滝から流れてる川はちょうど森のはずれに近い湖に通じてるみたいで。
 だからもう絶対迷っちゃだめだと思ってあそこまで頑張って川を下ってきたの…絶対に負けるな!って自分で自分に言い聞かせながら…。」

川村「めちゃくちゃな話やなぁ…。んで、肝心の能力は?」
能條「あみの能力はねぇ、全然役に立たないよ。その前に陽菜ちゃんの能力聞こうよ。」

高山「そうそう、ちーちゃんとろってぃーと陽菜ちゃんは一緒に来たみたいだけど…って、あれ?陽菜ちゃんは?」

4人が振り返った先には、ほんの先刻までそこに人が座っていたことを示す窪みだけを残し、川後陽菜の姿はなかった。
78:2013/12/09(月) 13:37:09.75 ID:
川後は先ほどの能條の話にみんなが夢中になっている間に、
誰にも気付かれることなくこっそりと洞窟を抜け出していた。

「みんなごめん。でも私は…探さなきゃ。あんな性格だから誰かにすぐにやられちゃう決まってるから…。
 それならいっそ私の能力を使って…!」

川後は一人森を後に一路東へと向かった…。
79:2013/12/09(月) 13:38:11.56 ID:
…川後陽菜が姿を消す前――――

PM 16:30

「さゆりんごパーーーンチ!!!」
「ひめたんビィィィム!!!」

松村沙友理と中元日芽香は、アイドルグループ乃木坂46の中で
それぞれ他のメンバーにはない必殺技をもっている。

「さゆりんごパンチ」と「ひめたんビーム」だ。

衆目の一致通り、戦いの場においてそれはそのままそれぞれの能力となった。
ではなぜ、そのような二人が都合よく出会い得たのか…

さかのぼること、数時間前――――


PM 15:00

「…能力を完璧に予測出来るって…。あ!それってもしかしてあたしと同じパターン…?」
中元は驚いたようにはっと口に手をあてた。
「そう!これ見て!」
そう言うと生田絵梨花は大きく膨らんだ自身のリュックサックから地図を取り出した。
80:2013/12/09(月) 13:39:28.18 ID:
生田「単純だから、裏をかいてまで森の方には行かないと思うの。
   だって山小屋の下でひめたん待ってた時に見えたけど、あの吊り橋渡るの大変そうだったもん…。生駒ちゃんとかれなりんは渡ってたけどさ…。」
生田は中元に言った。

生田「だから、うちらと同じように、山小屋を下ったこの辺りに来ることはまず間違いないと思う。」
中元「でも、だからってぴったりうちらのとこには来るか分かんないよ?どうやっておびきだすの…?ってかさ。」
中元には、先ほどから生田のリュックサックの大きな膨らみが気になっていた。

中元「このリュック、なにが入ってるの?」
生田「ふふふ…。その、おびきだし作戦に、これが役立つの。」

生田がゴソゴソとリュックサックをまさぐったかと思うと、次の瞬間、
二人の間にはたくさんの食べ物が散らばっていた。

生田「ほら見て!打ち上げに置いてあったの、たくさんもらってきたの!まさかそれがそのまま全部入ってるとは思わなかったけど…。」

「すごい…!これをばらまけば…!」「うん、さゆりんは寄ってくると思うよ…!」
81:2013/12/09(月) 13:41:03.84 ID:
「《カボス》…!」「《ホイップ》…!」「《カボス》…!」「《ホイップ》…!」

森の南西にある崖。
夕刻も迫った頃そこには、かたや真っ白なホイップまみれ、
かたや果物の果汁まみれになっている二人の人影があった――――

PM 16:30

「もうっ!」
衛藤美彩が言った。
「ホイップまみれになるのは深夜番組だけで充分だよ!それに…」
衛藤はホイップを拭った。

「…普通キャプテンって言ったら、もっとキャプテンらしい能力が与えられるはずでしょ…!?」
「そんなこと言ったら…」
桜井玲香は目をごしごしこすりながら言った。

「…美彩だって自分のこと先輩先輩言ってるけど、先輩らしさのかけらもない能力じゃん…!」
「そんなこと…!」
「それに!」
桜井は続けた。
82:2013/12/09(月) 13:42:30.11 ID:
桜井「さっきアンダーのこと言ってたけど…じゃあ、あみ、ちーちゃん、ろってぃー、陽菜ちゃんが今どこに集合してるか知ってるの…!?」
衛藤「…どういうこと…!?」
桜井「わ、わたしは…キャプテンだから…!みんなから信頼されてるから…!だからちゃんと教えてもらったの!」
桜井は北西を指差した。

桜井「あっち!森のはずれ!今みんなそっちにいるの…!」
衛藤「…っ…そんなの…!」
そんな時、二人の前に新たに現れた二人の人影があった。

???「…汚い…。」
???「なんて低次元な戦い…!」
83:2013/12/09(月) 13:43:22.78 ID:
「…まひろな、自分の能力にちょっと疑問があるねん。」
川後陽菜が消えたことで打ちひしがれていた4人の沈黙を破るかのように川村真洋は言った――――

PM 17:00

川村「『フロントに攻撃を受けた場合、攻撃した相手の能力時における力を2倍アップで得られる』…って、どゆこと?
   まひろは攻撃を受けたら相手の能力使えるようになるってこと?2倍の強さで?」

「…分かんないよそんなの…。」
能條が言った。
「まだ戦いになってみてもないんだから…。」
川村「ちょっと試してみたいから、誰かまひろと戦ってみてくれへん?」
斎藤「…ちょっと今は無理だからろってぃー、一人でやって。」
洞窟の中は重くどんよりとした空気が漂っていた。それぞれが壁を向き塞ぎ込んでいる。
84:2013/12/09(月) 13:44:35.92 ID:
川村(ほんとの攻撃じゃなくても、まひろの中で攻撃されてるつもりになれば効果は表れるんと違うかな…?
   うーんそこのとこも説明書にも書いてないし。ほなら、ここはひとつやってみよ。)
川村はまず一番近くにいた斎藤ちはるに目を留めた。

「(ちはるはあのコントローラー借りなきゃ結果が分からんからな…。)…ねね!あみの能力ってなんやっけ?」
川村は能條愛未の背中に声をかけた。

「あぁ…っくしょん…!…あみの能力はね…めっちゃ重いものが背負えるの。今あみ足腰の力すんごいことになってるよ。」
毛布にくるまった能條は答えた。
川村「(そっかぁだからや…じゃなきゃ普通川下りなんて出来へんもんな…。)ありがと!あと、まひろのことちょっと叩いて?あ、おでこ痛いからでこぴんはだめやで!」
能條「え?いいけど…。」

川村は息せき切って洞窟を出たあと、すぐそばにあった岩を勢いよく持ち上げてみようとした。
「…ふぐっ!…いてっ!…全然動かん…!あみほんとに力あるん…?」

手をさすりながら川村は思った。
「(かずみんはなぁ…声の変化がどうたら言うてたけど…でも剣道とか強いし試してみましょ。)ねえかずみん、まひろのことちょっと叩いて!」
川村は再び洞窟の外に出て軽く洞窟の岩壁を蹴った。
「(まっ言うてもそんな変わらんよね。)め~ん!」
85:2013/12/09(月) 13:45:32.15 ID:
この異常な事態の中にあって、生駒里奈は自らを理解していた。
パニックを起こさないように平静心を保ち、あえて現状を分析しようとしていたのだ。

「どうしよう…なんとか…なんとかしなきゃ…うちが…考えなきゃ!」
しかし考えて考えて呼吸が早くなっている自分にハッと気づき、目をつぶって気を落ち着ける。
そんなことの繰り返しだった。
その内に気づくと眠ってしまっていたようだ。

…生駒が目を覚ました時、辺りは夕暮れにさしかかっていた―――

「…あーっやっちゃった!めちゃくちゃ疲れてたから寝ちゃってたよ。これからどうしよ…。
 それに…さっきのことにもまだ…。」
毛布のように体にかかっていた木の葉を払い落としながら、生駒はこぶしを握りしめた。

「…あーもうだめだ!いくら考えたって、そんなの答えが出るはずないよ!
 そっちじゃなくて、状況を把握することから始めないと…こうして見晴らしのいい場所にも来た訳だし。」

数時間前、生駒がこの木に登ったのには腰を落ち着けることの他にも理由があった。
とりあえず、島の地理を理解しようとしたのだ。
86:2013/12/09(月) 13:46:38.39 ID:
生駒「暗くなる前にやんなきゃ…
   えぇと地図によると…この島は左上がりのギョーザみたいな形をしてる…
   今うちがいる森の先におっきい原っぱがあって…その先には山…反対のこっちには今いるこの木と川と…
   あれ?山小屋はあれか…わりかし近くにいたんだな…うちらが最初にいた山小屋はギョーザの右か…ん?」

サッ

見晴らしのいい木の上に立って四方を見渡していた生駒が突然後ろを振り向いた。
目の端になにかフワッとしたものを捉えたのだ。

「ん?今何かが見えて・・・んんん???」
87:2013/12/09(月) 13:47:56.73 ID:
川村真洋は呆然と立ちすくんでいた。

洞窟の中からは突然の轟音に驚いた3人が転がり出て来た。

「まひろ、何したの!?」
能條が険しい剣幕で問いただす。
「なんで…足上げてるの…?」
しかし川村は二人を無視し、黙り震える高山に声を振り絞って聞いた。

「なあ…かずみん…ただ声を変えるだけの能力って、言うたよな…?それがなんで…なにを隠してるん…!?」
89:2013/12/09(月) 13:48:56.99 ID:
(…あれは!)
目を細め先ほど見えたものの正体を探していた生駒の目に何かが映った。
(白い…さっき見えたもの…?少し違う気もするけど…ううん、よく見えない!)
指で望遠鏡を作って必死に目を凝らすと、
(煙…煙だ…!誰かがあそこで火を!)

次の瞬間、そこに生駒の姿はなかった。
90:2013/12/09(月) 13:49:51.81 ID:
辺りには刻一刻と夕闇が迫っていて、おまけにそれは数キロ先の出来事であった。
それを視ることが出来たのは、今の生駒に備わっている極度に研ぎすまされた五感によるためのものであった。
しかし…

そんな生駒にも、知るすべはなかった。
その直後、ゆっくりと反対側から姿を現し
生駒がいた場所でくすぶっている黒い靴の痕を覗き込むものの姿があったことを…
92:2013/12/09(月) 13:51:14.45 ID:
―――生駒が巨木の上から西方に煙を目撃する少し前…

(段々暗くなってきた…川から遠すぎず近すぎず、安全に眠れそうな場所ないかなぁ…。)
生駒里奈のいる巨木の近くを通りかかった人影があった。
若月佑美だ。
彼女は最後から二番目に山小屋を出発したあと、未だ森の東方に留まっていた。

彼女の能力は《若様》。
イケメン好きなメンバーを懐柔させることが出来るという能力だ。
つまりこの能力は、相手が人間の女子であればまず間違いなく通用するものと思われた。

なので自力でどうにか逃げ延びることさえ出来れば、《若様》で最強のメンバーを懐柔しこの戦いに勝利することの出来る可能性は高い。
そう踏んでいたのだ。
そのために身を隠し易いこの鬱蒼とした森に潜伏していた。
96:2013/12/09(月) 14:08:01.17 ID:
若月(あ、あの大きい木…!うん、ほどほど川の近くでほどほど森の中で…。よしっあそこに隠れよう!)

彼女は茂みを分け入り巨木に近づき、巨木の大きな根と根の間に樹洞を見つけた。

若月(んしょ…よし…と!入れた!やった!あ、けどここ結構暗い。)
彼女はリュックサックをまさぐり懐中電灯を出し明かりをつけた。
その瞬間、

若月「…!!!の、能力発動《若様》!!!」
???「…。」
若月「《若様》《若様》!!!」
???「…。」フワッ
若月「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

巨木の根には、こだまする悲鳴をあとに残し若月の姿は残されてはいなかった…
97:2013/12/09(月) 14:09:37.02 ID:
森の木々を素早く飛び移り進む影がある…生駒里奈だ。
彼女は巨木の上から煙を目撃した瞬間に、それがメンバーのおこしたたき火であることを悟っていた。

(早く…早く…!もうすぐ暗くなってさっきの場所が分からなくなっちゃう…!)
その時右方からかすかに声が聞こえた。
(あっちだ!)
98:2013/12/09(月) 14:11:02.11 ID:
「あみ…!あみ…!」
川村真洋が崩れ落ち泣いている。その横には呆然と立ちすくむ斎藤ちはるの姿があった。
その時。

「どしたの…!?なにがあったの…!?」
息を切らしながら生駒里奈が突然姿を現した。

斎藤「い、生駒なんで…!?」
生駒「その話はいいから!なにが起きたの!?」
川村「あみが…あみが下敷きに…かずみんが…」
生駒「かずみん!?かずみんがやったの!?」
川村「違うけど…でもかずみんが…」
生駒「かずみんはどっちに行ったの!?」
斎藤「あ、あっちに…」
99:2013/12/09(月) 14:12:45.78 ID:
「はぁ、はぁ、ひ、ひめたんビィー…ム…!」
「あれあれ、どしたん?もうスタミナ切れ?さゆりんまだまだ余裕やでっ。」

数時間前に始まった松村沙友理と中元日芽香の戦いは、二人が似た力を持っていたため長期戦になだれ込んでいた。
しかし…

生田と中元がまいた大量のクロワッサンを食べたことでエネルギー満タンの松村に対し、
ゲームが開始されてからほとんどまともに食事を取っていない中元はスタミナ切れとなっていた。
松村を罠に落としおびき出すための作戦が、あだとなったのだ…。
100:2013/12/09(月) 14:14:13.55 ID:
松村「もう夕方だよ?いつまで続けるん?そろそろ飽きてきたんよー。」
中元(くっ…!このままだと…。生ちゃん…生ちゃんはなにしてるの…!?)

中元は一人ではなかった。
当初の作戦通り、中元と戦っている松村の能力を不意打ちで封じるため生田は姿を見せず身を潜めていた。
しかし…

中元(でも…この場所じゃ…無理だ…!)
ビームを上手く相手に当てるためには、遮るもののない広い場所で戦うことが一番望ましいと思われた。
それは松村の能力にしても同じことであったが、例え中元がパンチを食らっても勝負を早く決めてしまえば関係ないと二人は考えたのだ。

しかし、そのことが大きな誤算となっていた。

激しい戦いのさなか生田が攻撃に当たることなく、また気づかれぬことのないまま松村に近づくことは二人の想像以上に至難の業であった…。
101:2013/12/09(月) 14:15:25.71 ID:
しゃくりあげる声が聞こえる…森のはずれにほど近い空き地だ。
そこはにはつい先ほどまで、居心地のよい洞窟があった。
しかし今はそのほとんどを、崩れ重なり合った岩が占めている…。

そこに二人の人影があった。
川村真洋と斎藤ちはるだ。
突然生駒里奈が二人の目の前に現れ、そしてまた去ってしまってからしばらくが経っていた。

二人とも言葉を発しない。ただ、川村の泣き声がむなしくひびくだけである…
102:2013/12/09(月) 14:16:43.10 ID:
その瞬間であった。
中元「あぁっ!!!」

松村「ごめんなひめたんっ。」
飛ばされて倒れ込んだ中元に笑顔の松村が近づいてきた…。
中元(くっ…生ちゃん…早く…!)

顔をあげた中元ははっと息をのんだ。
そこには、真剣な表情の松村がいた。

松村がこぶしを振りあげた。
「さゆりんごっ…」
103:2013/12/09(月) 14:17:38.97 ID:
「…さっきのこと…説明して…。」
しばらくしてからやっと、斎藤ちはるが一語一語絞り出すように言った。
その時、

ガサゴソッ

ふいに現れた人影があった。しかし薄暗闇にその顔を見ることは出来ない…

???「いた!ほんとここまで来るの大変だったよぉ…森の中カエルうじゃうじゃいるし…笑い…。」
頭についた大量の木の葉を手で払いながら、その人影は言った。

???「ずっとみんなのこと森のはずれで待ってたよぉ…けど、ものすんごい音したから、こっち来たんだけど…。」
118:2013/12/09(月) 16:20:48.87 ID:
「……う…。」
暗闇の中で若月佑美は目を覚ました。

「…ここは……くっ…頭を打ったみたい…。」
ゆっくり体を起こす。

「…明かりを…はっ!リュック!リュックがない!」
彼女が暗闇の中を必死にまさぐったその時、手が何かをかすった。

恐る恐る手を伸ばす…

どうやら、すぐ横に壁があるようだ。
ゆっくりと立ち上がり、手探りで壁沿いを進みだす…

その時、すぐ近くに気配を感じた。
「誰!?」
119:2013/12/09(月) 16:21:42.44 ID:
「はぁ…はぁ…生ちゃん…ひめたん…なにしてるん?w」

数時間前謎の光を目撃した畠中清羅と大和里菜は山を引き返し、やっとの思いで山の中腹まで辿り着いた。

「下りはそうでもないと思ったけど、上りは地味にきついね…。あぁお腹すいた!」
生田絵梨花と中元日芽香の間によいしょっと腰をおろした大和が言った。

畠中「ねぇ、何かお菓子とか持ってない?w」
120:2013/12/09(月) 16:23:02.34 ID:
「だいじょぶだから…!」「むり、むり、絶対むり…!」

同じ頃。

山の中腹から北に数キロ、山小屋の裏手。
山の北側の絶壁の上で動く二人の人影があった。

「ほんとにだいじょぶだから…!」
「こんな高さ、むりに決まってるじゃん…!」

秋元真夏と中田花奈は、もうずっとそんなやり取りを繰り返していた。

「だいじょぶだから!だいじょぶなんだって…!」
「いやいや、絶対むりでしょ…こんなの…!」
「だったら、二人で同時に飛ぼ?」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「ほんとにだいじょぶなんだって!だって今うちらがいるのは…!」
121:2013/12/09(月) 16:24:03.11 ID:
返答はない。
(…くっ!ここで恐怖に負けてたまるか…!)

徐々にはっきりとしてきた若月佑美の頭に、先ほど見たものの記憶が蘇ってきた。
しかしそれが何であったか、思い出すことは出来ない…
その時。

フワッ

再び気配を感じた取った若月はすばやく手を伸ばした。

「今度は触ったよ!!!やわらかくて温かい…!!!」
彼女は夢中で言った。
「なんだか変な匂いもするし…それにこの感触…分かった!!!正体は…おじさん…!?」

その瞬間、ふいに前方から声がした。

???「どいやさんは、おじさんなんかじゃないで…!」
129:2013/12/09(月) 18:26:26.43 ID:
「あ、ああ…。」
生田絵梨花が我に返って言った。

「二人ともなんであっちばっか見てるん?w…あ!ちんすこー!」
「わぁ!あ、けどお菓子ばっかじゃ肌に悪いからりなが野菜を!能力発動《トマト》!」

大和がそう唱えた瞬間、山の地面から巨大な植物が生えその枝にあっと言う間にリンゴのような赤く大きなトマトがなった。

「りなの能力トマトが栽培出来るやつなのwうけるよねw」
ちんすこーを頬張りながら畠中が言った「あ、そうそうw」

「うちの方は漢字が読めんくて、まだ能力使えてないんだけどさwwwこれなんて読むん?」
137:2013/12/09(月) 19:43:09.33 ID:
ぺしゃっ
「…ゲームが始まってから、みんなろくに食事をとってないでしょ?だから脳に糖分が不足してるはずなんだよね。」
ピシャッ
「…そうそう、でもそれだけじゃいけなくて、果物とかからビタミンも採らなきゃいけないの。」
橋本奈々未の目には肉弾戦に突入した衛藤美彩と桜井玲香、そして二人の仲裁に入る齋藤飛鳥の姿がぼんやりと映っていた。
「…汚い…。」
橋本はつぶやいた。
「能力発動…。」
139:2013/12/09(月) 19:44:09.55 ID:
「…!!!」
若月佑美は思い出した。そうだ、穴に入って懐中電灯で見たもの…大きくはれぼったい二つの目玉…
それにこの声は…
「なぁちゃん…!」

その瞬間。
明かりがついて辺りが照らし出された。

「そうやで!」
西野七瀬が言った。
140:2013/12/09(月) 19:45:25.03 ID:
「あぁ…。これね。これはしけ。時化って書いてしけって読むの。だから読み方は『おおしけ』。」
「えぇーそうなんだ!りな全然読めなかった!さすが生ちゃん!」
畠中はふと違和感を覚えた。

(うーん…なんか…なんか…あ、ひめたん?w)
先ほどから中元が一言も言葉を発しないのだ。

(ひめたんなんかいつもと違うwしかも…服とか破けまくってるしw)
生田も生田で様子が変だ。先ほどからチラチラと東の方角を見ている。
(あっちになんかがあるん?wそれにまだ聞いてなかったけど…。)

「ねぇ。」
畠中は切り出した。
「さっきさ、ピカッって…。」
「そうそう!」
生田からタッパーごと受け取ったいなり寿司を食べながら大和が言った。
「りな達その光が気になってここまで来たんだよねー。」
その瞬間。

二人を観察していた畠中は生田と中元が鋭く目配せするのを見逃さなかった。
生田「あ、あれはね…。」
「りな。」
畠中はゆっくりと言った。

「ちょっと、二人から離れて。」
142:2013/12/09(月) 19:46:55.19 ID:
「……ん…な…!み…さん!…みさん…!…ななみさん!!!」
橋本奈々未はふと我に返った。
「壁!壁が出てるよ!崖が折れちゃう!!!」
「え?」
144:2013/12/09(月) 19:53:33.20 ID:
「なな、争いは嫌いやねん。」
西野七瀬は言った。

西野「だから…山小屋を出たあとどうすればいいかの分からんくて…。けどそしたら、」
西野の腰の後ろから、フワフワとした、丸いギョロ目を持つ生物が恥ずかしそうに顔を出した。

西野「ななの能力は《どいやさん》やったの!だからどいやさんに出てきてもらって!」
西野は楽しそうに語る。若月の目はあらわれた生物に釘付けであった。

西野「最初はもっと狭かったんやけど…どいやさんが過ごしやすいようにトンネル掘ってくれたの!結構広いやろ?ここ。」
若月「ど、どいやさんは…そんなことも出来るんだ…。」

西野「妖精やからな!」
西野は白い歯をのぞかせて笑った。
「そう…じゃあ…。」
若月はゆっくりと言った。

若月「なぁちゃんには、戦う気はない…ってこと…?」
西野「うん。ない。」

「…でも。」
彼女はそう続けると、悲しそうにうつむいた。

「どいやさんから外の様子を聞いたんやけど…みんなは違うみたいやな…。」
146:2013/12/09(月) 19:59:24.86 ID:
「…かだかなかだかなかだかな!あーやっと終わった!」
中田花奈は大きく息を吐いた。

中田「酸欠になるとこだった…。でもこのくらいの長さなら地面に激突はしないけど、ぶら下がった時ちゃんと地面に降りられる。」
「激突…?」
力ない声が聞こえる。
中田は後ろを振り返った。

中田「ほら、木にもくくりつけたし後は体に付けるだけだよ。」
秋元「絶対に、むり…」
顔面蒼白でうずくまっている秋元真夏は言った。

中田「だから、だいじょぶなんだって!」
秋元「さっきからそればっか言ってるけど、なにが大丈夫なの…!?」
中田「うん…。あのね実は、」

その時、
147:2013/12/09(月) 20:01:00.73 ID:
「りな、離れて!」
畠中清羅は、生田絵梨花と中元日芽香をじっと見つめた。

畠中「せいら達が来る前、ここで何があったん?」
大和「えっ?えっ?」

生田「そ、それは…」
「…あれはね!」
先ほどから何も言葉を発しなかった中元が、苦しそうに体を起こしながら言った。

中元「懐中電灯で遊んでたんだよ…!二人のリュックの中にも入ってたでしょ…!?」

畠中「遊んでただけなら、なんでひめたんの服は破けてるの?」
ここにきて何事かが起こりつつあることを察した大和は、不安そうに離れながら成り行きを見つめた。

「ねぇ…ほんとは何があったん?」
畠中がためらいがちに一歩ふみだした、
その時、

ポトッ

トマトが一つ落ちた。
「うっ…ひめたんビ…!」
「りな!逃げて!」
「うわぁぁぁ!!!《トマト》《トマト》《トマト》《トマト》!!!」
148:2013/12/09(月) 20:03:22.35 ID:
ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!

(もう、みんなどうして…!?どうして…どうして戦うの…!?)
伊藤万理華は泣いていた。
しかしその頬にあるのは、もう悲しみだった頃の涙ではない。
鳴り止まないノートパソコンを前に、彼女は悔しさで涙を流していた。

伊藤(もう…どうなるか分かんないけど…わたしが…!わたしがみんなを説得するしか…!)
彼女は再び決意を固め立ち上がった。

伊藤(なによりここ、やっぱ臭いし…!うん、もう決めた!えい!…え?)
150:2013/12/09(月) 20:51:31.30 ID:
「…みんなは違うみたいやな。」
西野七瀬はうつむいて言った。
しかしすぐにうれしげな表情に戻り、

西野「でもな!右には川下りしてる子もおったり…左にはずっとバク転してる子もおったり…あ、あとな!」
彼女は目を輝かせて言った。
西野「生駒ちゃんなんて、さっきまでこの木の上で寝てたんやで!」

しかしその途端、再び悲しげな顔に戻り言った。
「そういう楽しそうな子もおった…でも…戦いを始めてしまった子もおる…。」
156:2013/12/09(月) 22:20:48.95 ID:
「《ダイトキバ『どんぐりころころどんぐりこぉぉぉ~!!!』
畠中の声は生田の声にかき消された。
「はぁ…はぁ…これでもう…!」
「わぁぁぁちがう!!!《トマト》《トマト》!!!せいら読み方ちがう!!!《トマト》!!!おおしけだよ!!!」
畠中はうなずき言った。

「《大時化》!!!」
157:2013/12/09(月) 22:22:41.64 ID:
「ななみさん!重みで崖が折れちゃう!!!」
「ななみん!ストップ!!!」「ななみだめ!!!」
橋本奈々未にはこちらに向かって走ってくる3人の姿が見えた。その時―――

『『『ゴロゴロ…ピッッッシャァァァァァ!!!!!』』』





突然の轟音に二人は身をすくめた。
「なに…!?」
上空を見上げた中田花奈の目に、急速に近づく暗雲が映った…

「やばい…!」





「でも、戦わないと意味がないんだよ?」
若月佑美は慎重に言った。
「戦って、なにを得るん?」
「だからセンターを…」
「ちがうと思う。」
西野は言った。
「センターは、人を倒して手に入れるもんやない…。気づいたら、立ってるものなんだよ。」

その瞬間であった。

二人の頭上を耳をつんざく凄まじい音が走った。
158:2013/12/09(月) 22:24:46.68 ID:
4人がいた崖は『壁』の重みに耐えきれなくなっていた。
そしてその時、森に大きな雷が落ちたのだ。

衝撃が走り、目の前がゆっくりと傾いでいく…





「真夏、ごめん!」
身をこわばらせた中田花奈は言った。
「《なかだかなかだかなかだかな》!」
「えっ?体が…!!!」
「いくよ!!!」




「開かない!!!開かない!!!なんで!!??」
伊藤万理華は井戸の蓋をドンドンと叩いていた。
「なんで!!!なんで!!!…え、なんの音?」
ポツ
ポツ
ポツポツ…
ポツポツ…ポツ…
ポツポツポツポツポツポツポツポツ……
蓋の隙間から水が漏れてくるのと彼女がその意味を悟るのは同時であった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」





二人の頭上で凄まじい音が走るのとどいやさんが動くのは同時であった。
その瞬間若月は重力を失いどこかに体が吸い込まれるような感覚を感じた…。
159:2013/12/09(月) 22:26:21.55 ID:
この世は地獄なんじゃなくて…天国だったんだなぁ…
橋本奈々未は思った。

あっちには雲ひとつないのに、こっちには黒い雲。
海には夕焼けが映えてるのに、こっちは大雨。
非現実的な景色の中をゆっくり落ちゆく白いホイップにまみれた仲間の姿は、まるで天使のようであった…

あぁ、弟にもっと優しくしとけばよかったなぁ…




崖を落ちていく小さな黒い二つの点を、遠くから見つめる姿があった。
ぱらぱらぱら…
オレンジ色の花弁が落ちる。

???「お願い、間に合って…!」
160:2013/12/09(月) 22:27:36.69 ID:
それにしても…
遠のく意識の中で橋本奈々未は思った。

なんでこんなに…すべてがゆっくりなんだろう…?
あぁきっと…これが世にいう走馬灯なんだ……
それにしてもあぁほんとに…

地面が近づいてくる…

天使みたいだな…天使……





急に空を覆った雷雲は、夕暮れ時の美しい平原に大雨をもたらそうとしていた。
…ポツ

しかし生駒里奈はその頬をつたい流れ落ちる雨を拭うことなく、一心に平原を西へ向け疾走していた…。
171:2013/12/10(火) 00:16:44.60 ID:



昨日の嵐が嘘であったかのように晴れ渡っている真っ青な空…

その島では、
アイドルグループ「乃木坂46」のメンバー達が
センターの座を賭けた、壮絶なバトルロワイヤルを繰り広げているのであった…

AM 09:00

厚い雲の隙間に光が射す…
173:2013/12/10(火) 00:21:46.37 ID:
露に濡れた草が、朝の光に照らされキラキラ輝く丘の上。

丘にあいた穴から、ひょっこり顔を出す人影がある。

???「うわぁっ!…うぇ…かたつむりか…カエルかと思った…けどこのかたつむりなんかスピード早いな…。」
穴の中を振り返ってその人影は明るく言った。
???「もう嵐はいったみたい!とりあえず、朝ご飯食べよ!」

???「ほらほら、食べなきゃ元気も出ないし!」
穴の中に戻ったその人影は、二人の人影に向かって言った。

???「二人のために、あたしが『ゆったん特製豪華モーニングセット』作ってあげる…!」
174:2013/12/10(火) 00:23:14.82 ID:
森を北上して抜けた先にある丘陵地帯から、能條愛未が見た滝。
井上小百合が最初に訪れた洞窟のある、島の北西の滝。
その滝に、ほど近い洞窟。

???「う、うーん…よく寝た…。」
そこに、眩しい朝の光を受けて大きく伸びをする人影がある。

???「おはよう…。」
そのすぐそばでもう一人の人影が言った。
???「おはよぉ…!」
最初の人影はにっこり笑って言った。

???「ほら…!まだひなちまは横になってて。朝ご飯とかは全部やるから!」
???「…ありがとう、まあや。」
176:2013/12/10(火) 00:46:59.76 ID:
そこからほぼ反対に位置する、島の南東部、山の麓。
辺りには所々に白い砂まじりの草地が広がっていた。海岸が近いのだ。

そこに、朝の光の中に浮かび上がる奇妙なテントのようなシルエットがある。

そのすぐそばで声がする。
「ねぇ…せいら…。引き換えそうよ…。」
「だから…。」

畠中清羅と大和里菜だ。
昨日とは打って変わって、二人は暗い表情をしていた…。
177:2013/12/10(火) 00:49:19.80 ID:
二人のいる山の北側、崖下のその北端。
所々雪に覆われた海岸は朝の光を反射して白く輝いていた。

その海岸の片隅に、なにか大きなものの姿がある…。

そこに、何かの動物が近づいた。
狼だ。
においをかいで、その大きなものをつついている。
獲物のアザラシだと思ったのであろうか…?
と、
ムクッ

そのアザラシは起き上がり…
178:2013/12/10(火) 00:51:29.04 ID:
ポトッ
大きな葉から雫が落ちる。

(水玉…模様…?)
茶色い瞳に、朝の光に透けたたくさんの雫が映る。

目を覚ました中田花奈がゆっくりと身を起こすと、
辺りは一面大きくカラフルな植物であふれていた。

(ここ…崖の下……はっ!)
彼女が辺りを見回すと、
すぐ先に倒れている人影があった。

駆け寄った中田が肩を揺すると、
「…う……。」
秋元真夏はかすかにうめき声を漏らした。
(よかった…怪我はないみたい。けどよっぽど怖かったのか…まだ気絶してる…。)
中田はつぶやいた。

「ごめんね…。」
179:2013/12/10(火) 00:53:07.83 ID:
中田花奈が目を覚ました場所の遥か上、
ゲームのスタート地点、すべてが始まった山小屋。

朝の光を反射する窓の内側には、4人の人影がある。

???「どいやさん…やっぱなんか臭いよ…。」
???「そんなことないで!!!」
???「あたしも思った…。」
???「はぁ…。」
184:2013/12/10(火) 08:34:49.91 ID:
丘の上には、3人の人影と3つのリュックサックがある。

「…。」
「…。」
「…。」
重苦しい沈黙が続く。

「…まさか、メガシャキまで入ってるとは…!おかげでめっちゃ目冷めたわぁ…!笑い…!」
押し黙る二人を前に、気まずい空気を誤摩化すかように斉藤優里は言った。
「そうだね…。」「やんな…。」

非常に簡素な食事を終えたあと、川村真洋、斎藤ちはる、斉藤優里の3人は丘の上に出て並んで腰掛けていた。

川村と斎藤は北へ向かって点々と続くクレーターをぼんやり見つめている。
そんな二人の姿を横目に見やり、とうとう諦めたかのように斉藤は言った。

斉藤「お腹もいっぱいになったことだし、そろそろ、昨日なにがあったか教えてくれない…?」
185:2013/12/10(火) 08:35:47.22 ID:
同じ頃… 

轟々と音を立て激しく流れる濁流。
その前で、呆然と立ちすくむ人影があった…。

???(そんな…橋が…!!!)
186:2013/12/10(火) 08:37:03.12 ID:
「…はい!薬草!」
和田まあやはそう言って樋口日奈に草を差し出した。
「走って取ってきたよ!」
「ありがとう…。」

そのそばに座って、和田は言った。
和田「昨日は…本当にごめんね。」
樋口「だから、そんなこと言わないで。」
樋口は体を起こしながら言った。

樋口「謝るのは私の方だよ…。あと少しで、まあやを…。」
187:2013/12/10(火) 08:39:14.15 ID:
昨日、
白い花の咲く滝の上の広場で井上小百合の姿を目撃したのは、和田まあやであった。

彼女の能力は《リレー》。
裸足になって能力を発動すると凄まじい速さで走れるという能力である。
彼女はその力で、一瞬にして井上小百合の背後から逃げ去ったのだ。
ではなぜ、彼女の姿はそこにあったのか。

昨日―――


名前の順で彼女が小屋を出たのは、5分×30人…
ゲーム開始から実に2時間半が経ってからのことであった。

その頃には、

秋元真夏が斜面の木に引っかかり、
生田絵梨花と中元日芽香が仲良くおしゃべりしながら山を下り、
生駒里奈は森の巨木に腰を据え、
伊藤万理華が井戸に身を潜め、
井上小百合が滝で雄叫びをあげ、
高山一実が森のはずれにほど近い所にまで達し、
西野七瀬がどいやさんを出現させ、
橋本奈々未が斉藤飛鳥を発見し、
畠中清羅と大和里菜が山の中腹を下っていた…。
189:2013/12/10(火) 08:40:23.20 ID:
しかし幸か不幸か、彼女はそのような自らの大きなハンデに気づくことはなかった。

和田「はぁぁ…!やっと外に出られた…!」
大きく伸びをした彼女は、

和田「うーん…よく分かんないけど…とりあえずこっちに進も!」
西に進む、吊り橋に続く道に一歩目を踏み出した。

…それからほどなくした後、小屋の裏手で秋元真夏と中田花奈が出会うこととなる。


そして1時間が経った頃…
190:2013/12/10(火) 08:41:35.02 ID:
――ッヒュン

和田「…やばい!…めっちゃ楽しい…!」
彼女は《リレー》を発動していた。

和田「…っとと!けどこれ森の中じゃ結構危ないなぁ…木にぶつかっちゃう。もっと広いとこがいいなぁ…。」
その時、
和田「あっ!…あっちに原っぱがある…!よし、あっちにいこう…!」

彼女は森の北部にいた。
したがって、丘陵地帯のゆるやかに続く草原が木立の間から遠くにすけて見えた。
和田「よしっ…っと!危ない危ない。あそこまではゆっくり、ゆっくり…。」

その姿を背後からうかがう、赤くギラつく大きな目があった――

???「ガルル…」
191:2013/12/10(火) 09:13:04.76 ID:
「…生ちゃんとひめたんは何かを隠してたんだよ。」

朝食のトマトを食べたあと、畠中清羅はもう何度目か分からない説明を繰り返していた。

畠中「多分…あの二人は誰かと戦ったんだよ。それがうちらにバレたのが分かって…。」
畠中は言葉を濁らせた。
畠中「攻撃しようとしてきたんだよ…。」

畠中には分かっていた。
攻撃は放たれた。しかし、それは実際には当たることはなかった。
むしろ、攻撃をしたのは…

畠中「はぁーあ…なぁんもないって分かってたのに、こっち来ちゃったよ…。」
畠中は憂鬱そうに空を仰いだ。
192:2013/12/10(火) 09:14:18.82 ID:
同じ頃…

崖下の北端。
白い波が打ち寄せる海岸。
そこに、転々と続く足跡がある…。

その足跡を辿った先には、よろよろと歩く大きな人影があった。
そのそばにはしっぽを振る狼の姿がある。

???「…うっ…うっ…。」
その人影は泣いているようであった。

???「なんでなんよ…!」
193:2013/12/10(火) 09:15:59.58 ID:
川後陽菜は森の東端、昨日までは吊り橋があったはずの場所の前で立ちすくんでいた。

川後(昨日の嵐で増水したんだ…!それで吊り橋が流されて…でも…向こうには…!!!)

彼女は昨日、森のはずれの洞窟を抜け出したあと―――


川後「能力発動!《川後P》!!!」
森を進みながら能力を発動していた。

彼女の能力は《川後P》。
3キロほどの広い視野を持つことが出来る。
彼女はその能力を使いながら森の中を元来た山小屋の方向に戻っていた。

川後(私よりも全然あとに出発した人は…私よりも絶対東にいるはず…。)
その時、
川後(…はっ!南東方向に…ゆったん…!)

彼女の脳内には、3キロほど前方で半狂乱になっている斉藤優里の姿が浮かび出された。
川後(なんかものすごいパニクってるみたい…助けてあげたい…けど…左に避けて進まなきゃ…。)

その様に、
誰かと出会う前にそれを事前に感知出来るため彼女の探索は順調かと思われた。
しかし…

しばらくして、彼女は森の中央で鬱蒼と茂る植物に身を取られ進めなくなっていた。
川後(どうしよう…このままじゃまずい……あれは?)
その時、

彼女は木立の向こうに開けた空間を発見した。
川後(あそこまでなんとか出れば…!)
194:2013/12/10(火) 09:18:37.56 ID:
「…そっか…あみちゃんが…。」
丘の上には、3人のリュックサックと、3人の人影がある.。


斎藤「ろってぃーのせいじゃないよ…。」
うつむく川村真洋の背中を斎藤ちはるがさすっている。

斉藤「…でもさ、説明書には『攻撃』って書いてあったんだよね…?」
そんな二人にためらいがちに斉藤優里は言った。

斉藤「…ろってぃーが自分で頼んで叩いてもらって…それは『攻撃』ってことになるのかな…?それに…。」
斉藤はゆっくりと続けた。

斉藤「もし…それがそうだったんだとしても…」
川村「そんなの…!」
顔をあげた川村が言った。

川村「今さら分かったとこで…!あみは生き返らへん…!!!」
195:2013/12/10(火) 10:14:43.96 ID:
川後「はぁ…はぁ…やった…!これは…?」
ようやく茂みを分け入りその空間出た川後陽菜は、呆然と辺りを見回した。

川後「なんか…めちゃくちゃ…木が折れて…なにかが通った跡みたい…あ!」

その時川後の脳内に、
左方に3キロほど行った場所なある丘に、腹這いになりその向こうにあるなにかの様子をうかがっている市來玲奈の姿が浮かび出された。

川後「距離が足りなくて丘の向こうまでは見えない…気になる…けど。」
川後は曲がりくねって続く荒れた道をぐっにらんだ。

川後「でも…進まなくちゃ!まいまいを探さなきゃ!!!」


その様にして、
彼女は嵐が起こる前まで辺りを《川後P》で感知しながらじぐざぐな森の道を進み続けた。
そして嵐が起こった時、鬱蒼とした森の茂みの中に避難してなんとかやり過ごし、翌朝になってやっとこの吊り橋に達したのであった。
しかし…。

川後(そんな…橋が…!!!)
196:2013/12/10(火) 10:16:04.38 ID:
一方その頃。
吊り橋のあった場所の向こう、山小屋では…

「…じゃあ、みなみはずっとここにいたの?」
呆れたように若月佑美が言った。

「ん、そうだよ。」
星野みなみはことも何気に答えた。

「ずっと…なにしてたん?」
西野七瀬が尋ねる。

星野「んー…ゴロゴロしたり…パソコンで映画みたり…本読んだり…まぁここ、ヘミングウェイとかしかなかったからあんまいい本なかったけど…。」

「…ヘミングウェイ…。」
力無く伊藤万理華がつぶやいた。
197:2013/12/10(火) 10:31:20.74 ID:
「まず、叩かれたことが攻撃に該当してたとして。ろってぃーは、あみの能力の2倍の『力』を得る。」

丘の上。
4つのリュックサックと、3人の人影がある…

AM 11:00

???「重いものを持ち上げられる力、それを可能にする川を下れるほどの強い足腰。つまり、あみの『力』は『力』そのもので…」
「どういうこと!?!?」
斎藤ちはると斉藤優里は悲鳴のように言った。

???「だからつまり、もし叩かれたことが攻撃になったなら…ろってぃーは絶対に岩を持ち上げられたはずってこと!」
198:2013/12/10(火) 10:34:15.76 ID:
時をは少しさかのぼり…

AM 10:30

「んー…。これ以上ここにいたって仕方ないしなぁ。」
朝食に二人でトマトを食べたあと、畠中清羅は言った。

「どうする?戻る?」
期待を込めて大和里菜が聞く。
畠中「とりあえず、海まで行こう。」

大和「えっ!それはっ…!生ちゃんとひめたんが無事か確かめにいこうよ!」
畠中「でもそれでまた攻撃されたらどうするん?」
大和「その時は…りなが《トマト》を出して防御するよ!」
畠中「確かにこのトマトはかなり丈夫だけど。こんな素敵なハウスも作れることですしw
   でも、それじゃこっちは逃げるしかないじゃん?」
大和「それは…そしたらまたせいらが《大時化》を…。」

「もう絶対うちは能力つかわん。」
畠中はきっぱり言った。
大和「でも!」

食い下がらない大和を見た畠中はようやく言った。
「…わかった。じゃあとりま海までいって、そのあと引き返そう?」
199:2013/12/10(火) 10:36:21.98 ID:
「どうしよう…。」

同じ頃。
AM 10:30

丘の上には、3つのリュックサックと2人の人影があった。

朝の様子とは一転、斉藤優里はすっかりしょげかえっている。
斉藤「どうしよう…。」

「…仕方ないよ。」
その横には、北西へ向かって続くクレーターをぼんやり見つめている斎藤ちはるの姿がある。
斎藤「仕方ないよ…いっぺに色んなことが…ありすぎたから…。」

「…でもさ。」
しばらくしてから、ためらいがちに斎藤ちはるは切り出した。
斎藤「うちも、さっきゆったんが言ってたこと気になるんだよね…。頼んで叩いたもらっらことは攻撃になるのか。それに、」
彼女はコントローラーを取り出した。

斎藤「もしそれが攻撃になるんだとしても、うちには当てはまらないんだよね…能力に2倍もなにもないから。」
「わぁぁ!」
頭をかきむしって斉藤優里が言った。

斉藤「なにかが…なにかが引っかかるんだけど…あたしの頭じゃ全っ然分からん…!」
その時…

???「ゆったん…ちーちゃん…!!!」
200:2013/12/10(火) 10:40:06.83 ID:
昨日―――

「やめて…!!!いや!!!いやだぁぁぁ!!!」
伊藤万理華は悲鳴をあげながら井戸の蓋を叩いていた。

「だめ…!!!雨が!!!で、でられない!だれか!!!」
井戸の中にはすでに水が溜まりつつあった。
「死んじゃう…!!!」
その時。

『ゴリゴリ…ゴリ…』
石壁の向こうからかすかに音がする。
伊藤「えっ・・・!?なに・・・!?」

その瞬間、
『…ドカァッ!!!』


「…それで、その時そこからこの…。」
伊藤万理華はちらっと横を見て言った。
「この変なのが出てきたの…。」

西野「変なのちゃう!どいやさんやで…!」
若月「まぁまぁ。」

AM 10:30

山小屋。
彼女達は、それぞれの身に起こった長い話を語り合っていた。

(へぇ…。)
3人の様子を楽しそうに眺めながら星野みなみはつぶやいた。

星野「やっぱ…どいやさんって…生で見ても…気持ち悪い…。」
201:2013/12/10(火) 10:45:00.21 ID:
???「ゆったん…ちーちゃん…!!!」
二人「れなりん!!!」


丘の向こうから現れたのは、市來玲奈であった。
市來「私…ずっとこの丘陵地帯にいたの…!それで話し声がしたから…!」

市來「…来てみたら、二人がいたの!ねえ、もう一つリュックがあるけどあとは誰がいるの?」
「あ…それは…。」
斎藤ちはるが言った。
「ろってぃーが穴の中にいるんだけど…でも今は…。」

市來「どうしたの?」
きりっとした真剣なまなざしで、市來は二人に尋ねた。
市來「なにがあったの?」
202:2013/12/10(火) 10:47:26.05 ID:
市來玲奈が二人と出会ったと同じ頃…

AM 10:30

「…うっ…うっ…なんでなんよ…!」
松村沙友理は泣いていた。
彼女の脳裏には昨日の出来事が思い出されていた。

昨日―――


松村「さゆりんごっ…!」

数秒が経った。
何も起こらない。
ぎゅっと目をつむっていた中元日芽香が恐る恐る目を開けると…
松村「姫…ここで何してるんっ!?」

「はぁ…はぁ…待って…!」
そこには肩で息をしながら立っている生田絵梨花の姿があった。
生田「…今なら…確実にひめたんを倒せるでしょ…?だから…一回だけチャンスをあげて…。私が…審判をやるから…。私を倒すのはそのあとでいいから…!!!」


松村「でもな、今は戦いの場なんやで。いくら姫の頼みやからって遠慮はせんでっ。」
にこにこ笑いながら松村は言った。
生田は中元を見てこくっと頷いた。

生田「では、いきます。1…。」
松村「あー、こんなのしても無駄なだけやのにっ。」
生田「2…。」

生田「…3!!!」
松村「さゆりんご『ガールズルール!!!彼~を~~好~き~に~な~~あって~~~!!!』
203:2013/12/10(火) 10:50:19.06 ID:
「そんなことないで!」
振り返った西野七瀬は言った。
西野「どいやさんはな…!うちら3人の命の恩人なんやで…!」

「まぁ…それは確かに。」
若月佑美は言った。
若月「あの時、どいやさんがうちらのこと吸い込んで、そのままトンネルの奥の井戸のとこまで運んでくれて…。」
その言葉を引き継いだ伊藤万理華が言った。
伊藤「…それで無事井戸を脱出して、みなみがいたこの山小屋へ…。」

西野「…それにな、そんなん言うたらみなみの能力だって…!」
「だめだってば!!!」
顔を赤らめた星野みなみが叫んだ。

星野「いいの…!力だけはあるんだから…!だから負けないんだから…!!!」
204:2013/12/10(火) 10:53:46.40 ID:
「違うって!」

和田まあやが樋口日奈のために山を走り、洞窟に戻って来た頃…

AM 10:30

和田「うちがもうちょっと…上手く違う方に…。」
「ううん。」
樋口は言った。
樋口「恐竜の頭は固いから、こういう岩場にぶつかって気絶でもしない限り、私はずっと恐竜のままだった…。
   …だから、まあやには本当に感謝してるの。ありがとうね、まあや…。」


???「ガルル…。」
和田「ゆっくり、ゆっくりね。」
???「ガルルルルル…。」
和田「ゆっくり…ん?」
後ろを振り返った和田まあやの目に飛び込んできたものは、

赤くぎらつく目。
太く大きな足に、細く小さな手。
恐ろしい牙…

恐ろしい恐竜の姿であった。

――ッヒュン!

その瞬間、考える間もなく和田はアクセル全開で森の中をじぐざぐに走り抜けていた。
和田(なんで!?!?なんで恐竜!?!?)
恐竜『ドドドドドドドドバキバキバキバキバキ!!!』
すぐ後ろからは木立をなぎ倒しながら迫る恐竜の足音がする…!

和田(だめだ!遅い!木を避けながら走ってたら追いつかれる!!!)
その瞬間彼女は90° カーブした。

和田(さっき見えた…!原っぱの方に行かなきゃ…!!!)
205:2013/12/10(火) 11:03:02.44 ID:
「一回、整理してみよう。」
市來玲奈はリュックサックの中からノートとペンを取り出した。

時は戻り…
AM 11:00

怪訝そうな顔で斉藤優里が聞く。
斉藤「…なんでそんなの持ってるの…?」

市來「ああ、ツアーの控え時間に数学の課題やろうと思って。ちゃんと全部終わらせないと卒業出来ないし…。でもその話はよくて、」
市來はサラサラとノートに文を書いた。

市來「ろってぃーの能力は、」
☆ 誰かに攻撃された時、その相手の2倍の力を得る

市來「ってことは…ゆったんで考えると…ゆったんの能力は『出っ歯たん』だよね?」
・ゆったんに攻撃される→ゆったんの2倍強くものを噛めるようになる

市來「でもここで一つ疑問が生じる…」
・ちはるに攻撃される→ちはるの2倍強く人を操れるようになる…???

市來「ちはるがアダプターをさせば相手はもう完全に操り人形なんでしょ?だから…」
市來は先ほどの☆の一文の後半部分を消し、書き直した。

☆ 誰かに攻撃された時、その相手の2倍の(筋)力を得る

「…『力』って言う言葉の解釈のせいでよく分からなくなってたんだけど。」
市來は続けた。
市來「得られる『力』の力って能力のことじゃなくて、そのままの意味の『力』を指してたの…!」
206:2013/12/10(火) 11:06:36.00 ID:
「ここまでは分かる…?」
市來玲奈は斎藤ちはる、斉藤優里に聞いた。

「わ、わかるよ…!」「も、もちろん…!」
「よかった!」
にっこり笑って市來は続けた。

市來「あみはの能力は簡単に言えば馬鹿力…」
・あみに攻撃される→あみの2倍=ものすごい馬鹿力を得る

「だから…。」
市來は考え考え言った。
市來「あみの攻撃が成立していれば…ろってぃーは必ず岩を持ち上げられたはず…。」

「ろ、論破だね…!」
斉藤優里が大きな声で言った。
斎藤ちはるは市來のノートを凝視している。

「…そうなの。」
市來は続けた。

市來「なら、なぜ、ろってぃーが洞窟を蹴って、洞窟は壊れたのか…。実際は、攻撃は成立していたのか…?でもそれを考えるには…。」
207:2013/12/10(火) 11:08:16.15 ID:
市來玲奈、斎藤ちはる、斉藤優里の会話と同じ頃…

AM 11:00

「うわぁ…!水着持ってくればよかった!」
「さっきと言ってること全然違うやんwww」
畠中清羅と大和里菜は山の麓の先の海岸に辿り着いていた。

大和「うわぁ!きれい…!」
海を前に無邪気にはしゃぐ大和を見て、畠中は思うのだった。
畠中(元気になってくれてよかったな…。)


(…はぁ…それにしても。)
砂浜に座って、ジャージの裾をめくり海に入って遊ぶ大和を見ながら畠中はぼんやりと考えた。
畠中(…甘いものでも…果物でも…野菜でもトマトでもなく焼き肉食べたい…。)
畠中は横を向き海岸の先にある河を見た。

畠中(せめて…魚でもいいな…いやイカ焼きもいいな…ん?)

その時であった。
畠中は素早く立ち上がり大和に向かって叫んだ。

畠中「りな!河の向こうからなんか飛んでくる…!!!」
212:2013/12/10(火) 15:09:34.46 ID:
畠中が飛んで来る何かを河の向こうに発見したと同じ頃…

山小屋では、窓際で会議が行われていた。

伊藤「私…水に浸かってパソコン壊れちゃったんだけど。」
黒板にはメンバーの名前が最初の席順の通り書かれている。

伊藤「でも、結構色々覚えてるよ!」

×まなつ《釣りったん》     生ちゃん《ハモり芸》      いこま《少年漫画》     れなりん《 ? 》   ねねころ《 ? 》   
まりか《まりっかちゃんねる》 さゆにゃん《スーパー戦隊》   みさ先輩《カボス》     陽菜ちゃん《川後P》  ろってぃー《 ? 》  
あしゅ《扇風機》       ちーちゃん《テレビゲーム》   ゆったん《出っ歯たん》   キャプテン《ホイップ》 まいやん《 ? 》   
かずみん《 ? 》      かなりん《なかだかな》     ひめたん《ひめたんビーム》 せいらりん《 ? 》  なぁちゃん《どいやさん》
あみ  《 ? 》      ななみん《理論武装》      せいたん《大時化》     ひなちま《坂之上くん》 まいまい《 ? 》   
みなみ 《          まっちゅん《さゆりんごパンチ》 やまとまと《トマト》    若月《若様》      まあや《リレー》

そう言うと伊藤万理華は名前の横に書き足した。
213:2013/12/10(火) 15:28:32.85 ID:
AM 11:30
時刻は間もなく正午を迎えようとしていた。
ゲームが開始されてから丸一日だ。


山小屋の下の崖下では、
中田花奈が秋元真夏が目覚めるのを待っている。

そしてその崖下の北端の浜辺では、
松村沙友理がよろよろと歩き続けている。

森を北に抜けた先にある丘の上では、
市來玲奈が斎藤ちはると斉藤優里と出会い、昨日起こったことについて話し合っている。

その丘を北西方向に進んだ先にある滝の近くの洞窟では、
和田まあやと樋口日奈が昨日のことを話している。

森の中の昨日まで吊り橋のあった場所では、
川後日奈が向こう側に渡る方法を思案している。

山小屋のある山の南端の浜辺では、
畠中清羅と大和里菜が河の向こうから飛んで来るものを発見していた。

そして山小屋では会議が行われていた…
214:2013/12/10(火) 15:31:52.14 ID:
「…でも…。」
伊藤は辛そうに秋元真夏の名前の横に×印を付けた。
西野「そういやこれ見て思い出したけどあの時らりんから手紙もらったなぁ…。」
「だから…!」

「だめだってば!」
自分の名前の横をこすって消しながら星野みなみは言った。
星野「書かないで!次に書いたり言ったりする人いたら、みなみやっつけるからね…みなみやれば強いんだからね…!」

若月「でも私が、みなみが能力発動する前に《若様》かけるよ。だってみなみ「池メンちゃん」好きでしょ?しかもそうやって言うけどさぁ…みなみどうせやる気ないでしょ?」
215:2013/12/10(火) 15:35:19.19 ID:
「うん。」
星野は言った。
星野「みなみやらないよ。面倒くさいもん。それより寝たい。」

「まだ寝足りないの…!?」
黒板を悲しそうに見つめていた伊藤は怒ったように振り返って言った。
伊藤「昨日ここで寝てたんでしょ…!?わたしの気も知らないで…こんなすぐ近くで…しかも蓋の鍵閉めたし!!!」

「だからごめんってば…!」
顔をあげた星野は言った。
星野「みんなが小屋からいなくなるの裏で待ってたら、なんか井戸の中から変な声して怖かったから…。」

「まぁでも!」
慌てたように若月が言った。
若月「こうやって、何人かで出会えたわけだし…。これからどうするのか、考えよ?
   戦わないで。みんなで協力して。」

若月は思うのだった。
(なぁちゃんの言ってたこと…私にはよく分かんない…でも。)
若月は窓の外から遠く西の山の頂を見つめた。
(知りたい…!)
216:2013/12/10(火) 15:42:42.87 ID:
同じ頃…

若月の視線の先、
森を越え平原を越えた先にある島の西端の山、
その頂。

そこにある灯台の中では、
マネキンのようなものをなでながら怪しく笑う一人の人影があった…




そして同じ頃、
その山の南端の険しい岩場には、
一艘の小舟がぶつかった…




そしてその山の麓のラフランスの木の下。
「…う……。」
生駒里奈が目を覚ましていた。

生駒「…昨日…平原を進み続けて…なんとか…山が見えるとこまでは行ったんだけど…。でも雨が怖くて気絶しちゃって…。」
目を覚まし昨日の記憶を辿った生駒はその時、薄れ行く意識の中で最後に見たものを思い出した。
生駒「なにか…すごく大きなものが…。」
生駒は辺りを見回した。

生駒「暖かかった…。よく…覚えてないけど、あれが、あれがここまでうちを…。」
その時、

ズン…ズン…ズン…
山に響く大きな音が…


バトルロワイヤルは今、大きく動き出そうとしていた…
217:2013/12/10(火) 16:11:36.87 ID:
一部完
236:2013/12/10(火) 22:49:11.72 ID:
237:2013/12/10(火) 22:56:33.93 ID:
AM 11:30

「せやけど…生ちゃん…ひめたん…なんでなんよ…なんでこんなゲームなんかに…!」

ドサッ

体を引きずるように海岸を歩き続けていた松村沙友理は、とうとう森のプラタナスの前で力尽きた。

松村(だめや…。もう力が出ぇへん…。)
狼が顔をなめる…
松村(お腹空いたぁ…狼ちゃんのこと…食べてもええ…?)
狼が駆けていくのが見える…
松村(あぁ…狼ちゃん…ばいばい…。)

その時。
遠くでなにかが鳴る音が…。

松村(…これは…笛…?…口…笛…?)
狼がしっぽを振りながら戻ってきた。
その瞬間、

ぽわっ

体が包み込まれるような感覚が…
そして光の向こうに…
238:2013/12/10(火) 22:59:09.56 ID:
同じ頃…

島の西方にある山の山中。

キーコ…キーコ…キーコ…

山の砂利道を、必死に自転車をこぐ人影があった。
井上小百合だ。

昨日―――


滝の上の草原で和田まあやにその姿を目撃されてしまってから彼女は、完璧かと思われた自身の能力の致命的な弱点に気づいていた。
井上(この能力…もしインターバルの間に攻撃されたら…!)
頬を涙が伝い落ちる。
井上(そのためには…時間制限のこと絶対に知られちゃいけなかった…!)
最悪のシナリオが思い浮かぶ。
井上(まあやが一人じゃなくて…誰かと一緒だったら…たくさんで行動してたら…そして今にもまた私の元にやって来ようとしていたら…!)
彼女は涙を拭いた。
井上(逃げなきゃ…!!!)

井上「もう、しばらく能力は使えない…。」
立ち上がった彼女は辺りを見回した。
そこには、彼女が前方の森の中の民家から引き寄せてバラバラにしたもので溢れ返っていた。

「せめて…なにか…なにか…あ!」
彼女は瓦礫の中の壊れたパソコンの下に自転車を見つけた。

「錆びてるかも知れないけど…走れ、自転車!!!」
239:2013/12/10(火) 23:02:07.28 ID:
同じ頃。
井上小百合のいる山の下の洞窟では…

「…でも、私…《坂之上くん》で恐竜に変身しちゃったあとのこと…全然覚えてないの…。」
しばらく横になって体を休めていた樋口日奈は、心配そうに切り出した。
樋口「まあやの他にも、誰か攻撃してないといいけど…。」

和田「まぁ…それは考えてもしかたないよ。そんなことより、早く体の傷治るといいね!」

樋口は森を抜け丘陵地帯を北西へ駆け抜けて逃げる和田を追いかけ続け、
和田がこの滝のある崖を90° カーブした時そのまま崖に激突したのだ。
そして変身が解けた時、彼女の体には恐竜時ほどではないものの傷が残っていた…。

樋口「まあやがくれた薬草のおかげで、大分よくなったよ!けど、まあやこんな知識どこで知ったの?」
「ん?フラワーフェスティバルだよ!」
和田は明るく答えた。
和田「広島っこは、みぃんなフラワーフェスティバルに行くの!ひめたんとかも!そこの出店によく、この白い花から作った薬草が売ってたからさ…!」

樋口の変身が解けたあと、
傷だらけの樋口のため和田は目の前にある山の中を駆け抜け薬草を探してた。
そしてその途中、井上小百合を目撃したのであった…。

樋口「でもねぇ…花は摘めたんだけど、さゆにゃんがねぇ…。」
和田「そうだったね…。もう、絶対変身したくないし出会わないといいなぁ…。」
240:2013/12/10(火) 23:06:01.43 ID:
同じ頃…


「…情報が足りない…!」

市來玲奈は、先ほどの話のあと、
すっかり黙り込んでしまっていた。

「…ねえ。」
斎藤ちはるの視線の先には☆の一文がある。

斎藤「ろってぃー…なんか…もっと色々言ってた…。ちょっと待って!」
斎藤は川村のリュックサックから川村の説明書を取り出した。

斎藤「確か…ほら!『フロントに攻撃を受けた場合、攻撃した相手の能力時における力を2倍アップで得られる』。」

「!?」
その瞬間市來は反応した。

市來「Front…!?ちょっと見せて!」
斎藤から受け取った川村の説明書を夢中で読むと、

市來「そうか…そういうことか…!」
二人「どういうこと…!?」
市來「あのね!」
241:2013/12/10(火) 23:08:11.88 ID:
「Frontって『前』ってことなの!…でも、」
市來は二人に背を向けて座った。

市來「みんなは『洞窟では壁を向いて座ってた。』ってさっき言ってたでしょ?壁を向いてる人が背後の人のことを…、」
市來は振り向きざまに二人を叩いた。
市來「叩く時…絶対にSide…普通前を叩けない。だから!」
勢いよく市來はノートに書いた。

ろってぃーは
・自分から頼んで攻撃を受けた
・Frontに攻撃を受けなかった

市來「これで決まり!攻撃は絶対に成立してなかった…!!!」
二人「なるほど…!」「なんでそこまで発音いいの…!?」
「そして…!」
市來はゆっくりと言った。

市來「洞窟が壊れた理由はただひとつ。ろってぃーは、体の前の、どこかが痛いって言ってなかった…?」
242:2013/12/10(火) 23:30:39.47 ID:
同じ頃…

「あっ、戻ってきた!」
浜辺には、河のふちギリギリに立って大きく手を振る畠中清羅と大和里菜の姿があった。
大和「こっち!ねね、こっち!!!」


先ほど…

AM 11:00

畠中「何か飛んでくる…!」
大和「もの!?人!?」
畠中「分かんない…あぁっ!!!」

ズザァァーーー…
浜辺に着陸したものは…

二人「ねねころ!!!」

伊藤寧々であった。

彼女はゲーム序盤に山小屋を出発したあと、森の中で能力が覚醒した。
彼女の能力は『怒りのロンダート』。回転しながら素早く移動出来るという能力だ。
彼女はその力で森を南下し、島の南部に出ていた。

…その姿を、後にどいやさんが目撃することとなる。
243:2013/12/10(火) 23:46:17.32 ID:
そしてそのあと…

伊藤「海岸沿いに進んでたら、崖の下にみさみさ、れいか、あしゅりん、ななみんが倒れてて…。
   それでその時嵐が来たから、急いでみんなを崖下に運んで、嵐からかくまったの…。」
伊藤は二人に昨日の出来事を語った。

伊藤「それで、今朝やっと目覚めたななみさんが、河の向こうにも誰かいるかもしれないって…! 
   だから、ロンダートで助走付けてこっちまでジャンプして来たの…!」

そして…

AM 11:30

ズザァァーーー…

「ねねお帰り!!!りなのトマト届けてくれた!?あ、みかんと生クリーム!!!」
二人は伊藤が反対岸から持ち帰った衛藤のカボスと、
大和が渡した生田のいなり寿司が入っていたタッパーに入っている桜井のホイップに飛びついた。

畠中(うん…甘いものでも…果物でも…野菜でもトマトでもなく焼き肉食べたかったけど…もはやいい!!!美味しい!!!)

「…でね。」
しばらくした後、伊藤は二人に言った。
伊藤「これからどうするかなんだけど…私達と、合流しない?
   あのね、私空中にいる時見えたんだけどここからちょっと行った河の上の方に大きい木が倒れてて、
   それが橋になってるんだよね…!


…同じ頃、
森の巨木が倒れて出来た橋を渡る一人の人影があった…
244:2013/12/11(水) 00:22:49.40 ID:
同じ頃…

「うーん…。」
山小屋にひびく4人のうなり声。
伊藤万理華、西野七瀬、星野みなみ、若月佑美だ。
「これからどうするか…そんなの分かんないよ…。」

「…でもさ。私ひとつ気づいたんだけど。」
若月佑美が言った。
「まりかって、薬飲んだ意味あるの?」

「そうなんだよね…最初からノートパソコンの電源は付いたしあたしも不思議…あ!!!」
伊藤は突然大声をあげた。

「だからあたし付属品の方の説明書しか読んでなかった!!!」
彼女は勢いよくリュックサックから自身の説明書を取り出した。
伊藤「あなたは…支給したノートパソコン(最初から使用可)と…島にあるすべてのパソコンから『まりっかちゃんねる』を閲覧することが出来る!!!」
若月「…!!!
   みなみさっき昨日パソコンで映画みたって言ってたよね!?そのパソコンは!?」
星野「と、となりの最初ジャージに着替えた部屋の棚の中に…!!!」
245:2013/12/11(水) 00:25:16.04 ID:
同じ頃…

「…う…。」
「真夏!!!」

崖の下では、秋元真夏が目を覚ました。

秋元「ここは…?」
中田「崖の下…!」
秋元「あれ…なんで…?」
中田(…あれ?真夏、恐怖で記憶が飛んじゃってるみたい…無理矢理バンジージャンプしたこと…。)

中田「う、うん!上手く降りたの!」
秋元「へぇ…。それで、花奈はこれからどうするの…?」
秋元は身を起こして、トロンとした目で中田に聞いた。

「ここは…うちの予想通り、何かが狂ってる。まるで南国みたいだし…。」
中田は辺りのカラフルな植物を見回しながら言った。
中田「…だから、進んでみよう。それで、ここが狂ってる原因を探す…!」
246:2013/12/11(水) 00:33:22.25 ID:
「それが…思い出せないねん。」
川村真洋は力なく言った。
川村「森に入ってしばらくしてから、陽菜とちーちゃんに会う前までのことが…。」
4人は並んで丘の上に腰掛けていた。

あのあと。

斎藤「言ってたかも…確かおでこが痛いって…!」
「これで謎は解けた。」
市來は立ち上がり言った。
市來「ろってぃーを呼ぼう…!」


「…やけど、ごめんな。」
川村は申し訳なさそうに続けた。

川村「まひろがメソメソしてるあいだに…みんな色々考えてくれてたんやな…。かずみんにも、悪いことした…。」
248:2013/12/11(水) 00:42:21.74 ID:
和田まあやと樋口日奈に噂話をされているとはつゆ知らず、
井上小百合は二人の頭上にそびえる島の西端の山を進み続けていた。

キーコ…キーコ…
(自転車も錆びてるし…進みにくいなぁこの道…。)
キーコ…キーコ…
(でもだいじょうぶ!あぜ道は慣れてる!)
キーコ…キーコ…
(けどそれにしてもこの山…最初の山となんか違う。)
井上は自転車を止めた。
(最初の山は…もうちょっと暖かい感じがしたんだけど…この山はなんていうか、)
彼女はぶるっと身震いした。
(寒いし…雰囲気もなんだか寂しい…木も、枯れてるのばっかだし…。)
その時、
ひらっ
舞い落ちるものが…
「桜…?」

その時…
(…あれは!?まやあ!!!)

彼女は先ほど洞窟に姿があったはずの和田まあやの後ろ姿を発見した…
249:2013/12/11(水) 00:57:49.63 ID:
AM 11:59

正午を前に、メンバー達にはそれぞれ動きがあった。

山小屋の下の崖下では、
中田花奈と秋元真夏が北端へ向けて歩を進めていた 。

そしてその崖下の北端の浜辺では、
松村沙友理が何者かに介抱されていた…。

森を北に抜けた先にある丘の上では、
市來玲奈と斎藤ちはると斉藤優里と、川村真洋が並んで腰掛け話をしている。

その丘を北西方向に進んだ先にある西端の山では、
桜の木の影で前方の様子をうかがっている和田まあやを、
井上小百合がその背後からうかがっている…。

山小屋では、一心にパソコンを覗き込む4人の姿がある。

川後日奈は、森の巨木が倒れて出来た橋を渡り終えようとしている…。

畠中清羅と大和里菜は、その橋へ向かって海岸の北に向かって歩を進めている。

その対岸では、伊藤寧々が4人に二人がこちらへ向かっていることを報告している。

そして…

生駒「かずみん…なんで…!?」
高山「…。」サッ

ドンッ

生駒「…っく!」



ピッ

PM 00:00

灯台の中では…
「…ふふ。行け。」

???「はい。」


バトルロワイヤルは大きく加速していく…
250:2013/12/11(水) 01:03:29.74 ID:
「まだ聞いてなかったけど、ゆったんはなんで森のはずれでうちらを待ってたの?」
斎藤ちはるはそう尋ねた。

PM 12:05

あれから話題は、他の3人がそれぞれに出会うまで何をしていたのかということに変わっていた。

(覚えてないんじゃ…仕方ないもんね…でも。)
市來は思った。
市來(…その間にあったことが…すべてのカギなのに…!)

「あぁ…ごめん…山小屋でちーちゃんから回って来た手紙、盗み読みしちゃった…笑い…。」
斉藤優里は答えた。
斉藤「んでもちゃんと、玲香に渡したよ!玲香めっちゃ広げて読んでたけど!!!」

斎藤「あはは…そっかぁ…。れなりんは何してたの?」

「…え?あ、わたしは!」
考えにふけっていた市來は慌てて答えた。
市來「最初、森に進んだんだけど、あの森じゃ見つかり難い代わりに誰かを見つけ難いし、地図を見てそのバランスが一番いいこの丘陵地帯に進んだの。」
川村「さ、さすがれなりんやな…じゃあ、誰かのこと、見つけられた…?」

市來「うん…見たは、見たんだけど…。」
251:2013/12/11(水) 01:21:23.07 ID:
「ほぉー…。」
感心したように若月佑美はつぶやいた。
「面白いなぁ…トマト…。」
西野七瀬は笑っている。
「だから…強いんだから…。」
星野みなみは顔を赤らめている向いている。

山小屋の部屋では、
4人が伊藤万理華が起動させたパソコンを見ていた。

その時…

ピコン!




その時
山小屋の下の山の中腹で川後は、
3キロほど先の山の中腹で倒れている生田絵梨花と中元日芽香を『感知』していた。

(くっ…!)
川後を唇を噛み締めた。

(まいまい…でも…。…行かなきゃ!!!)




「…ま…い…まい…。」
「うん…。さゆりん、今癒してあげるからね。」

松村沙友理は狼とともに現れた深川麻衣の腕に抱かれていた。
疲れきった体が癒えていくのを感じる…

松村「まいまい…どう…やって…。」
深川は目を細めて微笑んで言った。
深川「私の力は《聖母》…。天使さんの力をかりて、傷を癒すことが出来るの。」

松村「居場所はどうやって…。」
「ああそれは。」

深川「さゆりんを見つけたこの子が、森の先にいた私を口笛でここに呼んでくれたの…。」
深川は二人のすぐそばでしっぽを振っている狼に笑いかけながら言った。
「ね…ポチ?」
252:2013/12/11(水) 01:35:37.87 ID:
三人「見たは、見たけど…?」
「…うん、見たけど…」
市來玲奈は答えた。

「一つは…小さくて速くて…そのすぐ後ろには、大きくて速くて…最後に遠くに見たものは、すごく大きくて…。」





西端の山。

生駒「か…かずみん…なんで…!」

ドンッ

生駒「か…かずみん…!」

ドンッ



「…ど、ど、どうしよう…!」
そのすぐそばの桜の木の陰には、
和田まあやの姿があった。

彼女は先ほど…

和田「でもねぇ…花は摘めたんだけど、さゆにゃんがねぇ…。」
樋口「そうだったね…。もう、絶対変身したくないし出会わないといいなぁ…。」
その時、

樋口「…ん?ねえまあや、山の方から、なんか地響きがしない…?ほら、ズン、ズンって…」
和田「…え?あ、ほんとだ!さゆりんかな!?」
樋口「分からないけど…どうしよう!逃げる?」
「いや!」
立ち上がった和田は行った。

和田「ひなちまは…まだ休んでなきゃダメだよ!まあやが見てくる…!」


「…やばいよ…やばいよ…どうしよう…。」
和田は桜の木の陰で震えていた。
その時、

和田「…あ…!!!」

ズン…
ズン…

井上(…あれは…!!!)
253:2013/12/11(水) 01:52:49.21 ID:
ピコン!

伊藤「あ…えっ?新着メールだ!」
若月「メール…!?」

伊藤「ちゃんと能力発動したから新しくメールまで使えるようになったのかな…!?待って、今開いてみる…!!!」

カチッ

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件名:く
本文:

こんにちは。
やっと、ノートパソコン以外のパソコンを使いましたね。
ずっと待っていました。
あなたが、島にあるパソコンを使った時回線が開通するように私が細工しました。
今は、井上小百合が西の山のパソコンを破壊してしまったので島にはこの一台と、南の海岸の二台しか残されていませんが…。

私が、なぜ、井上小百合がパソコンを壊してしまったことを知っているかと言うと、
私は、今、あなた方の戦いを外部から監視しているからです。

外部…それはどこかと言うと、
島の外、すなわち「現実」です。

しかし、それ以上のことは言えません。
あまり直接的なことを言って君たちの脳波に影響を与えすぎると、
私はこのプログラムから強制退去となってしまうからです。

なので、それを回避する方法として、
私は島にあるプログラムを送り込みました。

それは、島に在っても不自然でないものの姿形をしています。
狼です。

なぜ狼を選んだかと言うと…。
私は、運営の…いや、あの方の犬などではないからです。
言わば、いつか噛み付く機会を狙っている、一匹狼なのです。

私のことは…、そうですね。
事情通とでも、呼んで下さい。


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254:2013/12/11(水) 02:04:56.36 ID:
「う、う~ん…。」
松村沙友理は立ち上がった。

松村「完全に、回復したでっ!」
「ふふ。よかったぁ…!」
そのそばで少し顔の青い深川麻衣が笑って言った。

深川「じゃあ、これから私がゲームが始まってから今までいた場所があるから、そこにいこ…!」






「…せいらとりなまだかなぁ。」
その頃、

森の崖の下、島の南方の海岸では、
伊藤寧々、衛藤美沙、齋藤飛鳥、桜井玲香、橋本奈々未の姿があった。

伊藤「うーん、多分もう少しかかるはず…。」

(…それなら、また再考しよう。なぜ、私達が…)
橋本奈々未は上を見上げた。
橋本(あんなにも、高い場所から落下したのに一命を取り留めることが出来たのか。)

「んー。ななみーななみー。」
その横では、橋本にじゃれつく齋藤の姿がある。

「…じゃあ、ちょっと私あっちの方散歩してくるね!」
桜井がぎこちなく言った。
衛藤「…。」
桜井「みさ…。いっしょに、行こ…?」
256:2013/12/11(水) 11:07:43.19 ID:
258:2013/12/11(水) 11:21:28.66 ID:
秋元《釣りったん》     生田《ハモり芸》      生駒《少年漫画》     市來《 ? 》   伊藤《怒りのロンダート》   
伊藤《まりっかちゃんねる》 井上《スーパー戦隊》    衛藤《カボス》      川後《川後P》   川村《 ? 》  
齋藤(飛)《扇風機》     斎藤(ち)《テレビゲーム》   斉藤(ゆ)《出っ歯たん》   桜井《ホイップ》  白石《 ? 》   
高山《 ? 》       中田《なかだかな》     中元《ひめたんビーム》  永島《 ? 》   西野《どいやさん》
能條《 ? 》       橋本《理論武装》      畠中《大時化》      樋口《坂之上くん》 深川《聖母》   
星野《 ? 》       松村《さゆりんごパンチ》  大和《トマト》      若月《若様》    和田《リレー》
259:2013/12/11(水) 11:45:08.12 ID:
「…これは…一体…?」

山小屋の中では、メールを見た4人が声を失っていた。

若月「意味が…現実…?」
その時、

ズキィィーーーン……

4人は頭を押さえた。
「いっ痛い…!」「きゃぁぁ!」「っく…。」
どいやさんが心配そうに近寄る。

若月「ま…まりか…ちょっとどいて…!」
頭を抑えながら若月が伊藤と席を交代した。

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件名:Re:く
本文:

よく意味が分かりません。
もっと分かり易く説明して下さい!

狼とは、一体なんなのですか?

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260:2013/12/11(水) 12:35:39.89 ID:
ズン…ズン…

和田「…せいらりん…それと…まいやん…!!!」
井上(らりんと…まいやん…!!!)
生駒「…ぐっ…らりん…まいや…ん…。」

「ふふ…。いこまちゃん、久しぶり…!」

そこには、

巨人化した永島清羅と、
その手のひらの上で白い歯を見せて笑う
乃木坂46のエース白石麻衣の姿があった。

永島「……ぬーん……。」





「一つは…小さくて速くて…そのすぐ後ろには、大きくて速くて…最後に遠くに見たものは、すごく大きくて…。」

丘の上では、先ほどから沈黙が続いていた。
それぞれが難しい顔をして考えこんでいる…

斉藤(まったく意味が分からない…。)川村(なんやっけ…なんかが…。)斎藤(小さい、大きい、もっと大きい…。)

「…うーん…。確信はないんだけど…。」
しばらくしたあと、市來が言った。

市來「変なこと言うけど…驚かないでね?
   あれは…多分…。まあやと…それを追いかける恐竜と…そして…。」

「巨人みたいな、せいらりんだったように見えたの…。」
264:2013/12/11(水) 13:49:04.29 ID:
ピコン!
「あっ…!返信来た!!!」
カチッ

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件名:ろ
本文:

どうやら、NGワードがあるようですね…。

先ほどみなさんの身に起こった頭痛は、
私の書いた直接的なワードをみなさんが読んだことによって引き起こされたものです。

そのように、私には色々な制限があります。
まず名を明かせない、直接接触出来ない…

いいですか、
私自身からは、みなさんに影響を与えることはあまり出来ないのです。
今もこうして文字だとしても、直接的な言葉を使えないのです。

その点を回避して、私がみなさんに影響を与え得るために…私の代わりにみなさんの元へ送り込んだもの、
それが「狼」です。

島に在って不自然でない動物の姿形をしながら、
不自然でない形で、島にあるヒントをばらまくように設定されています。

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265:2013/12/11(水) 13:50:35.95 ID:
266:2013/12/11(水) 13:57:47.34 ID:
崖下の森を進み続けていた秋元真夏と中田花奈は、先ほどから辺りの様子が変化したのを感じていた。
中田「ここ…まるで…。」
秋元「…あ!金木犀!」
秋元の指差した先には、

ぱらぱらぱら…
オレンジ色の花弁が落ちる…

中田「…秋!?」


その時、

ピューーー…

風に乗ってなにかの音が…
267:2013/12/11(水) 14:11:36.05 ID:
268:2013/12/11(水) 14:34:36.48 ID:
ひらっ
桜の花びらが舞い落ちる…

「…けど、なんで…。」
生駒は息も絶え絶えに言った。
生駒「ぐっ…三人は…仲間なの…!?」

ズン…ズン…ズシン
巨大な永島聖羅は動きを止めた。

「そうだね…。それくらいは、説明してあげる。」
白石は永島の手のひらから降りながら言った。

白石「私の能力は…《ガールズルール》。破ることの出来ない約束を、相手に結ばせることが出来る。」



「…生ちゃん!!!ひめたん!!!」
その時川後陽菜は、
東の山の中腹を進み続け群生するトマトのなる不思議な植物の中に倒れていた
生田絵梨花と中元日芽香を発見していた。

「二人とも!!!しっかりして!!!」
「う、うーん…。」



「…かずみんは、今私の能力にかかってる。」
白石はどこか寂しげに笑いながら言った。
白石「だから、自分の意志を持ってない…心にあるのは、一つだけ。『メンバーを攻撃しろ』」




「ひ、ひなちゃん…?」「かわご…?」
川後「よかった…!どうして、ここに倒れてたの…!?なにがあったの…!?」

生田「うーん…昨日…。…あ!!!」
269:2013/12/11(水) 14:48:27.04 ID:
「…まいまい!?さゆりん!?」
「…あっ!まなったん!!!かなぺちょ!!!」

その時崖下の金木犀の木の下では、
秋元真夏と中田花奈、深川麻衣と松村沙友理が出会っていた。

深川「…ポチが、前の方から誰かの臭いがするって言ってたけど二人だったんだね!」

「…け、けどどうやって!?」
中田花奈は戸惑いながら言った。
中田「どうやってこの崖下まで降りたの!?」




「…そんなことが…あったんだね…。」
一方その頃、東の山の中腹では…

生田「そう…それで、さゆりんが転がり落ちて行っちゃったの…。」




「この島から…!出ることが出来る…!!!」
4人は息を飲んだ。

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件名:Re:ま
本文:

秋は、どこにあるのですか…!?

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ピコン!

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件名:い
本文:

そのことなのですが…。
私の狼は、出来損ないだったようです。
どうやら、その場所には「秋」の代わりに「春」を落としてしまったようなのです。

その場所は、島の西端の山の、灯台の前です。

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276:2013/12/11(水) 19:16:21.80 ID:
277:2013/12/11(水) 19:18:19.99 ID:
秋元《釣りったん》     生田《ハモり芸》      生駒《少年漫画》     市來《 ? 》   伊藤《怒りのロンダート》   
伊藤《まりっかちゃんねる》 井上《スーパー戦隊》    衛藤《カボス》      川後《川後P》     川村《 ? 》  
齋藤(飛)《扇風機》     斎藤(ち)《テレビゲーム》   斉藤(ゆ)《出っ歯たん》   桜井《ホイップ》    白石《ガールズルール》   
高山《 ? 》       中田《なかだかな》     中元《ひめたんビーム》  永島《進撃のせいらりん》西野《どいやさん》
能條《 ? 》       橋本《理論武装》      畠中《大時化》      樋口《坂之上くん》   深川《聖母》   
星野《 ? 》       松村《さゆりんごパンチ》  大和《トマト》      若月《若様》      和田《リレー》
283:2013/12/11(水) 21:48:54.44 ID:
「…。」
「…ねぇ。」

桜井玲香と衛藤美沙は橋本らの元を離れ、海岸沿いを二人で歩いていた。
しかし衛藤は、先ほどから一言も言葉を発しない…

「ほ、ほら!ここ島に流れ着いたものがいっぱいあるよ…!」
気まずい空気を誤摩化すかのように桜井は言った。
衛藤「…。」
桜井「み、みて…シャンプーとか…パ、パソコンとか…!」
「…ねえ玲香。」
そんな桜井を真っすぐ見つめて衛藤が言った。
衛藤「さっきは…ごめんね…。」





同じ頃山小屋では、
「灯台!?」「行こう…!」「それでゲームマスターを…!」
興奮に満ちた伊藤万理華、西野七瀬、星野みなみの姿があった。

若月「ま、待って!今、聞いてみるから!」

カタカタカタ…ッタン

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件名:Re:い
本文:

では、その島の西端の山の灯台に行けばいいのですね!?

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ピコン!

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件名:や
本文:

まず、その前に私の狼を処理して下さい。
私の干渉した痕がこの島の中に残ることはあまり望ましくないので。

出来損ないの狼は、私が島に放ってから、まず最初に灯台の前に誤って「春」を落としてから、
山小屋の北にある崖から転落してしまったのです。

なので、今その狼は崖下にいます。

しかし、まずはその前に…

パソコンの中に、無題のドキュメントがあります。
先にそれを見て下さい。

実は、私は出来損ないの狼の他にもう一つ手を打っています。
そのことについて、書いてあります。

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284:2013/12/11(水) 22:05:20.42 ID:
「だから、自分の意志を持ってない…心にあるのは、一つだけ。『メンバーを攻撃しろ』」

白石麻衣は、寂しげに微笑んで生駒に言った。
そしてそのあと、ゲーム開始から自身の身に起こったことを回想した…



まだ山小屋で、出発を待っていた頃。

ふと、白石は気配を感じて横を見た。
するとそこには、彼女の方をチラチラうかがう一人のスタッフの姿がある…

白石(あれ…あの人…何さんだっけ。)

その時、
そのスタッフは彼女の元に近づいて…

謎のスタッフ「…隣の部屋で着替える時に、棚の中のパソコンを見ろ。」
小さく呟き去って行った…
白石(…え!?棚の中のパソコン…!?)

ツンツン

西野「…まいやん、らりんから手紙やで!」
白石「…あ!なぁちゃん…ありがとう…。」
謎のスタッフの言葉に混乱していた彼女は、西野七瀬から永島聖羅からの手紙を受け取った。


まいやんへ

さっき、前の席のれいかがめっちゃ手紙広げて読んでるの見えたんだけど、
チームDは森のはずれで待ち合わせの約束してるみたい…!
だからうちらも、待ち合わせしよ!
まいやんは名前の順で先だから、
私が出てくるまで、
丘のとこで待ってて!
285:2013/12/11(水) 22:37:59.06 ID:
若月「無題のドキュメント…あ、あったこれだ!」

カチッ

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私の言葉通り、このパソコンを開いたようだね。

しかし、あまり部屋を出るのが遅いと不審に思われてしまう。
読んだあとは早急にジャージに着替えるように。


私は、現在の運営…いや、あの方の方向性に不満を持つ者だ。
そこで、君にこの島を早く出る方法を教えるべく、このパソコンにメッセージを残している。

まず…このゲームには、ゲームマスターが存在する。
彼は君達が涙を流し、苦しむ姿を見るために、君達が積極的に戦い合うことを望んでいる。

しかしそれは逆を返せば、
その様な姿を積極的に見せることが出来れば、
その分だけ君達が早く解放されるということを意味している。

そのためには、君が、その役を担うのだ。

まだ、君の能力は発動していない。能力が発動するのは一時間が経ってからだ。
しかし、信じて欲しい。
君の力は強い。

…しかし、いくら君の力が強いと言っても、このゲームでは『権利』と言う厄介なシステムを採用している。
先ほど今野氏から説明は受けたと思うが、
『権利』とは、『強いメンバーに対して不可避の攻撃を与える事が出来る』と言うシステムだ。
君の力は強いため、必ずや、その権利の施行対象となるだろう。

そこでそのことに対する、私に出来得る最大の措置として、
『権利』を持つメンバーを、君のあとに出発する高山一実に設定した。

君は、この小屋を出たあと、何らかの方法を使って彼女を脅し、どこかに呼び寄せるのだ。
そうすれば、あとは君の能力を使って彼女が『権利』を施行することを防ぐことが出来る。


君が乃木坂46のことを想う気持ちがあるのであれば、
君がヒール役に…犠牲にならなくてはならない。
そしてこの戦いを、ドラマティックに仕立てあげるのだ。
そして、あの方は満足させるのだ。

そうすれば、このゲームの中で、メンバー達が苦しむ時間少なくて済む。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
286:2013/12/11(水) 23:06:29.37 ID:
「かずみん…。」
「まいやん!?」
山小屋を出たあと、彼女は5分後に山小屋を出て来た高山一実と対峙していた。

高山「な、なにして」
「かずみん。」
白石は震える声で言った。

白石「…森のはずれで、チームDのみんなと集まる約束してるでしょ…?
   みんなを…失いたくなかったら…。森のはずれの先にある平原の先の、西の山に来て…!」
それだけ言うと、くるりと振り返った白石は森の方を丘に向かって駆けて行った…



「…ぐっ…じゃあ…らりんも…らりんも…まいやんに操られてるの…!?」
生駒里奈は涙を流しながら言った。
白石「…うん…そうだよ…。」
白石は顔をゆがませている。

生駒「なんで…そんなこと…!」





ピコン!

4人が無題のドキュメントを見たあと、静まり返っていた山小屋の部屋にメールの着信音が鳴り響いた。

若月「…。」

カチッ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

件名:ん
本文:

お分かり頂けましたね?
このゲームには、最初からこのゲームにおいてどのように行動すべきか理解しているメンバーがいます。
そのメンバーと接触して、私と接触したことを打ち明けるといいでしょう。
彼女はゲームマスターを倒す上で大きな力となるはずです。
そのメンバーの名前については、既にこれまでのメールにヒントを忍ばせました。

…そして言い忘れましたが、
崖下では、私の狼が秋元真夏、中田花奈、深川麻衣、松村沙友理を今にも襲おうと


バンッ!!!

「…なぁちゃん!?」
その時、山小屋の部屋に大きな音がひびき渡った。

「こんなの…こんなの噓つきや…。」
西野七瀬は涙を流しながら怒っていた。
今まで、どのメンバーも目にしたことがないほどに…

西野「だったら最初から…この子に…ゲームマスターのことを言った方が早いやんか…。
   この子は…最初から…色々背負ってきっと今も苦しみながら戦ってる…。
   …こんなの、一匹狼なんかやない…!狼少年や…!」
288:2013/12/11(水) 23:26:05.20 ID:
「じゃあ…、いこまちゃん。そろそろ…。」
うつむいていた白石は、顔をあげて言った。
白石「かずみん…。」
高山一実はうつろな目で竹刀を振り上げた。


…高山一実の能力は《裏声》。声色を自在に操ることが出来るという能力だ。
彼女は、森の中の洞窟で川村真洋らに嘘をついてはいなかったのだ。
しかし…
(どうしよう…まいやんに言われたこと…。やっぱり…。)
高山は森のはずれで皆を待つ間も、洞窟に腰を据えていた時も不安にかられていた。
(…一人で、行った方がいいのかな…。)
その時、

川村「(まっ言うてもそんな変わらんよね。)め~ん!」

『ドゴォォォォン!!!』

洞窟内に轟音がひびき渡った。
驚いた彼女が外に飛び出すと…
川村「なあ…かずみん…ただ声を変えるだけの能力って、言うたよな…?それがなんで…なにを隠してるん…!?」

その瞬間高山は走り出していた。
(私が…来ないからまいやんが攻撃したんだ…!!!西の山に行かなくちゃ!!!)

そして白石とで出会い、《ガールズルール》をかけられたのであった…

…高山は、《裏声》が戦闘には不向きであったため、
井上がめちゃくちゃにした民家から白石が発見した竹刀を使って生駒に不可避の攻撃を続けていた。
それは能力を使用しての攻撃ではなかったため《まちっかちゃんねる》に通知されることはなかった…


白石「かずみん…。」
高山が竹刀を振り上げた。
生駒「…!!!」
その時、

――ッヒュン!

和田「かずみん…!ダメ…!!!」
292:2013/12/11(水) 23:45:12.91 ID:
井上(ぐっ…!まあやの馬鹿…!)
和田まあやが桜の木の陰から飛び出して生駒の前に大きく手を広げて立ちはだかった。

「どうしちゃったの…!?なんで…!?」
和田の頬を涙が伝い落ちる…

白石は驚いた表情を浮かべている。

その時、高山が竹刀を振り上げ…
白石「だ…!」

井上「天装!!!《スーパー戦隊》!!!」
294:2013/12/12(木) 00:12:08.35 ID:
「さゆりんご『ガールズルール!!!彼~を~~好~き~に~な~~あって~~~!!!』

松村「ご……ぱ……!!!???」
中元「くっ…ひ…ひめたん…ビィィィィィム!!!」

「…それで、さゆりんは…。」
生田は小さな声で川後に言った。
生田「ここを転がってって…東の海に…。」
中元「…。」

「そっか…。」
川後は二人を発見したあと、
二人から二人の身に起きた昨日の出来事を聞いていた。

「陽菜ちゃんは…どうしてたの…?」
しばらく沈黙が続いたあと、生田が聞いた。
「あ、あぁ私は…最初…、森の中で、」
川後は昨日の出来事を思い出した…

川後「…まず、ろってぃーとひなちまを『感知』して…ひなちまは行っちゃったけど、そのあとろってぃーと出会って…
   …そして次にちーちゃんを『感知』して…それで、森のはずれで…。」

川後はサッと後ろを向いた。
(涙は…見せたくない…。あぁ…みんな、今頃何してるんだろう…。元気かな…?)
涙を拭った川後は言った。
川後「…ってかさぁそんなことより、なにこの心臓みたいな果実…!変なの…!」

中元「あ、あぁそれは…りなが…。」
川後「…りな?」
その時、

川後「…!!!見て!!!山の上の方に…!!!」
中元「…え?」
生田「…あれは…みなみ!?」
295:2013/12/12(木) 00:14:38.21 ID:
三人の会話のほんの先刻…

「よし、今すぐ崖の下に行こう。」
若月佑美は怒りに燃える目で言った。
「ぐすん…うん。」「行こう…。」
西野七瀬と星野みなみは答えた。

「私は、ここでパソコンをチェックしてる。またこの…。」
伊藤万理華は顔をゆがませて言った。
伊藤「…変なのからメールが来るかも知れないし。あと、今日はまだないけど誰かが誰かに攻撃するかも知れない。」

若月「おっけー…了解。それで、どうやって崖の下に降りるかだけど。みなみ、大丈夫だよね?」
「…うん!」
星野みなみは言った。
星野「みなみ、もう大丈夫。」
296:2013/12/12(木) 00:25:55.65 ID:
井上「天装!!!《スーパー戦隊》!!!」

「…さゆにゃん!?」「…っく…!」「えっ…!?」

ーーーッビュン!

次の瞬間、井上小百合は生駒里奈と和田まあやを両脇に抱えて空中にいた。

井上「は、はっはっは…!さ、さゆにゃん、正義!!!」
「な、なんで…!?」
かすかに安堵の表情を浮かべた白石は言った。
白石「いつから…!?」
その時、

「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

全員が振り返った、その先には…

和田「ひ、ひなちま!!!」

…樋口日奈は、和田が洞窟から《リレー》で去ったあと…
(…だめだ。まあや一人を行かせる訳には行かない…!)
傷ついた体を引きずり、和田のあとを追いかけていた…

高山が今にも樋口竹刀を振り下ろそうとする…
白石「だ、だめ…!」
井上は樋口を救うために猛然と空中を進む…

樋口「きゃぁぁぁ!!!《坂之上くん》!!!」
297:2013/12/12(木) 00:50:31.62 ID:
ふわっ

風に揺れるカーテンの向こうに、中田花奈の姿がある…


中田「…け、けどどうやって!?
どうやってこの崖下まで降りたの!?」

崖下の金木犀の木の下で、秋元真夏と中田花奈、深川麻衣と松村沙友理が出会ってから、
彼女達は金木犀の近くの小さな小屋でゲームが始まってからそれぞれの身に起きた長い話を語り合っていた。

「…まっちゅんな、それで海に落ちたあと、」
松村沙友理は言った。
松村「水泳やってたししばらくは自力で泳いでたんよ、でもその時嵐が来て、海が荒れて、海流に…」

松村はにこにこと笑いながら言った。
「運ばれたの!ほんとに運がよかったっ。海流に島まで運んでもらえるなんてっ!おまけにまいまいにまで出会えたしっ。」

秋元「まいまいは、どうやってさゆりんを助けたの…?」
深川「あぁ…私の能力は《聖母》なんだけど、人の疲れとか傷を癒せるの。あと、」

深川は微笑みを浮かべて言った。
「天使さん達にお祈りしたら、こうやってちょっとした家まで作ってくれたの。」
「いいなぁ…ほんと…。ずっとここで編み物してたなんて…。」
秋元は中田を恨めしそうに見ながら言った。

秋元「…私なんて、中田に無理矢理バンジージャンプさせられたんだから…。」
「だ、だからごめんって…!」
中田は焦って言った。
中田「でも私の《なかだかな》はかなり丈夫だから、だいじょぶだったんだって…!」

秋元(あれ…?…だいじょぶ…って…なんだっけ…。
   …あ、あの時だ…あの時花奈、だいじょぶだいじょぶ言いながら、何かを打ち明けようとしてたような…。)

「けど、本当に丈夫だね…!この鎖…!」
深川が楽しそうに言った。
深川は先ほどから中田の《なかだかな》で編み物をしていた。

「でも、だから一回分無駄になっちゃったねっ。」
松村は言った。
松村「あの時まいまい、二人が崖から落ちない様にお祈りしたんでしょっ?」
300:2013/12/12(木) 01:26:47.51 ID:
昨日…

崖を落ちていく小さな黒い二つの点を、遠くから見つめる姿があった。
ぱらぱらぱら…
金木犀のオレンジ色の花弁が落ちる。

「お願い、間に合って…!」
深川はひざまずいて祈った。

深川「島の崖から落ちていく人達を…救って下さい…!」


…深川麻衣の能力は《聖母》であるが、その力は深川が召喚出来る天使達の力によって行われるものであった。
したがって、彼女は天使達に『お祈り』をすればその願いを叶えることが出来た。
深川はそれを偶然発見した。

彼女は名前の順で後半に山小屋を出たあと、川後陽菜の読み通り森の東側にいた。
そこで…

(…なに!?この木は…!)
樋口日奈が《坂之上くん》で恐竜化してなぎ倒した森の木を、発見していた…
深川「かわいそう…。お願い、折れた枝がまた元通りに戻って…!」
次の瞬間、

その木がみるみる再生していくのを、深川は目の当たりにしていた…

そしてその力を使って、
深川「お願い、どこか安全な所に…!」
ふわっ

深川は崖の下に降り立ったのである…
…しかしその深川の優しさによって生まれた能力には、
副作用とでも言うべき代償があった…


(…うん、でも、あの時ちゃんと願いが果たされた感触はあったんだけどなぁ…。)
深川は首を傾げた。
深川(…あのあと結構、体に反動がきたし…。)

「…それで、ここで編み物やってたらポチと出会ったんでしょ?いいなぁ…。」
不満げな秋元のそばでは、うれしそうにしっぽを振る狼の姿がある…
秋元「いいなぁ…。」


…そのようにして彼女達4人は、
バトルロワイヤルおいてほんのつかの間、安らかな時間を過ごしていた…

その時…
302:2013/12/12(木) 01:32:53.18 ID:
「いくよ。」
山小屋の上の崖を見下ろす場所に立って、星野みなみな言った。
若月佑美と西野七瀬とどいやさんが頷く。

星野「能力発動!!!《9トン》!!!」




川後「…!!!見て!!!山の上の方に…!!!」
中元「…え?」
生田「…あれは…みなみ!?」




『ッッドシーーーーーーーン!!!!!!!!』



松村「なにっ!?」秋元「…ひっ!」深川「わぁっ!」中田「えっ!?」
304:2013/12/12(木) 01:44:52.79 ID:
「きゃぁぁぁ!!!《坂之上くん》!!!」

井上は空中で急停止した。
「…っえ?それって確か転校生の…?」
和田「…さゆにゃん!!!逃げて!!!」

次の瞬間そこには…

恐竜「ガルル…」







「恐竜…恐竜…。」
丘の上。

川村真洋は、市來玲奈の言葉を聞いてから何かを思い出そうとしていた。
「…恐竜…。なんやっけ…。」






井上「えっ…?恐竜!?」
和田「逃げて!!!」
305:2013/12/12(木) 02:12:28.29 ID:
「さっきは…ごめんね…。」
衛藤は大きな黒い瞳を潤ませながらいった。
衛藤「玲香を…無視して…私昨日のこと、」
「大丈夫!」
そんな衛藤をさえぎって桜井は言った。

桜井「昨日の話でしょ…?大丈夫。みさが言ってたことは、正しい…
   私は…遅刻ばっかりするし…振り付けもよく間違えちゃうし…全然キャプテンらしくない…。
   自分でもずっと思ってたよ。なんでキャプテンに選ばれたんだろうって。」
衛藤「っそれは」
  「いいのいいの!」
桜井は笑って言った。

桜井「そういう優しさなら間に合ってる。気を使ってくれなくても大丈夫。私は…」
桜井は前を向いた…
その時、

桜井「…あっ!!!」
衛藤「…え?…あっ!!!」






恐竜『ドドドドドドドドド!!!!!』
井上「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
和田まあやと生駒里奈を抱えた井上小百合は凄まじいスピードで西端の山を滝の方へ飛び抜けていく…
その背後には…

シュゥゥゥゥ…
「なにっ!?なに!?今のなに!?!?」
人間サイズに戻った永島と、
「さゆにゃん…頑張れ…!!!」
こぶしを握りしめる白石と、
「…。」
感情を欠いた目をした高山の姿があった。

その時…
306:2013/12/12(木) 02:19:22.79 ID:
ドーーーーーーン!!!

ピストルの轟音が西の山にひびき渡った…

振り返った白石と永島が硝煙の向こうに目にしたものは…






桜井「…堀ちゃん!!!」
衛藤「…みおな!!!」

二人の歩いている海岸の先には、

乃木坂46二期生、堀 未央奈
彼女の姿があった…
その瞬間、

桜井「っみさ危ない!!!」
衛藤「きゃぁぁ!!!」

ドーーーーーーン!!!
307:2013/12/12(木) 02:29:11.79 ID:
ピコン!

伊藤「っは…!やっぱりまた!!!」

カチッ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


件名:バレッタ?
本文:

ほんとうのことが、バレてしまったようですね…でも、
りゆうを聞きたくはないですか?私も色々行動には理由
があります。
きっと、みなさんなら分かってくれると思うのです。
ただ、少しタイミングが悪かったですね、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


伊藤「…なにこれ…!言い訳してる…!自分も、私達を戦い合わせたかっただけなくせに…!」
その時、

ピコン!

伊藤「あ…!どこかで攻撃が…え…!?」

[堀 未央奈が、南西の海岸において桜井 玲香を攻撃しました。]
308:2013/12/12(木) 02:36:01.13 ID:
それらはすべて、一瞬の出来事であった。


白石「…みおな!!!」
堀 未央奈の放った弾丸は、井上小百合の方へ飛んでいき…

堀「《デリート》…。」ザッ

白石「待って!!!」
「あぶない!《進撃のせいらりん》!!!」
永島の影が大きく延びる…





衛藤「玲香…!!!玲香…!!!」

堀「《アップデート》…。」ザッ

衛藤「みおな待って!!!」





伊藤「これは…!?」





バトルロワイヤルは終局へ向けて動き出していく…
309:2013/12/12(木) 02:43:21.39 ID:
311:2013/12/12(木) 08:39:15.31 ID:
秋元《釣りったん》     生田《ハモり芸》      生駒《少年漫画》     市來《 ? 》     伊藤《怒りのロンダート》   
伊藤《まりっかちゃんねる》 井上《スーパー戦隊》    衛藤《カボス》      川後《川後P》     川村《 ? 》  
齋藤(飛)《扇風機》      斎藤(ち)《テレビゲーム》   斉藤(ゆ)《出っ歯たん》   桜井《ホイップ》    白石《ガールズルール》   
高山《裏声》        中田《なかだかな》     中元《ひめたんビーム》  永島《進撃のせいらりん》西野《どいやさん》
能條《 ? 》       橋本《理論武装》      畠中《大時化》      樋口《坂之上くん》   深川《聖母》   
星野《9トン》       松村《さゆりんごパンチ》  大和《トマト》      若月《若様》      和田《リレー》

堀《デリート》《アップデート》
315:2013/12/12(木) 13:12:49.27 ID:
『ッッドシーーーーーーーン!!!!!!!!』


…星野みなみの能力は《9トン》。
永島聖羅ほどではないが、彼女もまた9トン分の重さを持つ巨人に成長することが出来るのだ。
彼女は5分×25人…約2時間後に山小屋を出たあと、

(…あー面倒くさい!!!)
若月らに打ち明けたように、すぐに山小屋の裏手に隠れていた…。
星野(…まあやが最後だから…まあやが出た後に部屋に戻ろう…。)
その時、

「あぁ…もう…ああああああ!!!」
星野(え…井戸から…!?なに!?)
伊藤の叫び声を聞いて井戸の蓋を閉めてしまった…

そして和田が山小屋を出るのを確認したあと、彼女は山小屋の中に忍び込んだのだ。
そしてそのあと、

「…なにこれ!めっちゃムカつく!!!」
山小屋では説明書を見た彼女の怒りの声がひびいていた。
星野「今ダイエットしてるのに…!!!こんなの…使う訳ないじゃん!!!」



「…みなみこれ今初めて使ったの!!!すっごいこれ意外といい景色!!!」
崖の下…南国の植物の上には、巨大化した星野みなみの姿があった。

若月「いいから早く!!!うちらを崖の下に下ろして!!!」
316:2013/12/12(木) 13:14:31.11 ID:
同じく崖の下では…

松村「なにっ!?」秋元「…ひっ!」深川「わぁっ!」中田「えっ!?」
突然の轟音がしたあと振り返った彼女達がカーテン越しに崖の方向に見たものは…

中田「あれは…みなみ!?」
狼「ピューーーーーーーーーー…!!!」




山の中腹では…

「早く!!!早く!!!」

一心に山を駆け名無しさん@実況は禁止です
317:2013/12/12(木) 13:36:17.39 ID:
一心に山を駆け上がる生田絵梨花、川後陽菜、中元日芽香の3人の姿があった…

「はぁ…はぁ…私の能力も残りあとわずか…だけど、ここを越えたら…!」
和田まあやと生駒里奈を両脇に抱えて飛ぶ井上小百合は、
今まさに自身が昨日バラバラにした瓦礫で溢れる滝の上の広場を飛び抜け滝を越えようとしていた…
しかし、

バンッ!!!

井上「…そんな!ジャンプした!!!」
恐竜は滝を難なく飛び降り井上をなおも追いかけ続ける…
恐竜「ガルルルルルル!!!!!」

井上「まあや!!!あと少しで3分経っちゃう!!!」
和田「え!?3分!?」
井上「あと少しで飛べなくなっちゃうの!!!」
和田「…あ!」

和田は昨日目撃した崖の上の広場で度々《スーパー戦隊》を中断し休憩する井上の姿を思い出した…

和田「…分かった!じゃあまあやを降ろして!」
井上「え!?」
和田「まあやの能力逃げれるやつだから!早く!」
井上「…分かった!!!」
井上が地面に接近する…

ッズザァァーーー
地面に着地した和田は滑りながら…
「能力発動!《リレー》!!!ひなちま、ほらこっち!!!」

和田は猛然と走り始めた…

そのまま生駒を抱えた井上は右へ飛んで行く…
318:2013/12/12(木) 13:38:55.48 ID:
「…恐竜…。なんやっけ…。」
川村真洋のつぶやきを聞いた市來玲奈は振り返った。

市來「なにか思い出した…!?」
川村「うん…。恐竜って…どっちから来て…どっちへ行った…?」
斎藤ちはると斉藤優里はそんな二人を不思議そうに見つめる。

「うん…あっちのクレーターは、」
市來は北へ向かって続くクレーターを指差した。
市來「あれは、せいらりんの歩いたあとなの…巨人の。」

そして市來は南西方向を指差すと、
市來「恐竜は、あっちから来て…、」
3人「うんうん。」
市來「そして、あっちへ…。」
市來が北西方向を指差した…
3人「うんうん…え?」
市來「…やばい!!!」


……ドドドド┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨!!!!
321:2013/12/12(木) 14:54:24.66 ID:
「みおな、待って!!!」
堀 未央奈は立ち止まることなく白石の方へ近づいて来る…

シュゥゥゥゥ…
白石のそばに人間サイズに戻った永島聖羅がうずくまった。

高山は樋口の現れた場所で竹刀を振り上げたまま固まっている…

白石「せいら…だいじょうぶ!?」
永島「銃弾は…手で…弾いたけど…。」

永島は苦しそうに言った。
「力が抜けて…元に…。」

その時、
永島「…はっ!まいやん!」
322:2013/12/12(木) 14:55:47.81 ID:
衛藤「玲香…玲香…みおな待って!!!」

堀 未央奈は立ち止まった。

衛藤「なんで…どうして…?」
「だって…。」
堀はゆっくりと言った。

堀「こうするしか…ないじゃない…。」

ドーーーーーーン!!!
323:2013/12/12(木) 14:57:49.98 ID:
ドーーーーーーン!!!

堀「《デリート》…。」

カランッ!

堀が白石を打ち抜くのと高山が竹刀を取り落とすのは同時であった。

永島「まいやん!!!」
高山「…くっ。」
高山は辺りを見回した…

高山「私は…《ガールズルール》に…。はっ!」
その時、永島に銃口を向ける堀 未央奈の姿が映った…

堀「ダッテ…コウスルシカ、ナイジャナイ…。」

高山は足下の竹刀を拾い上げ走り出す…
324:2013/12/12(木) 15:14:54.77 ID:
市來・斉藤・斎藤「恐竜!!!!!」
川村「思い出した!あの時!!!」

市來「ゆったんいくよ!!!」
斉藤「うん!!!」

市來と斉藤は丘を駆け下りて行く…
川村「待って…!」

市來「能力発動!《社交ダンス》!!!」斉藤「能力発動!《出っ歯たん》!!!」




中田「あれは…みなみ!?」
狼「ピューーーーーーーーーー…!!!」

星野の手のひらに乗った若月佑美と西野七瀬は…
西野「…口笛!?」
若月「あっちだ!!!みなみ進んで!!!」




(遅い…。)
橋本奈々未は帰りの遅い桜井玲香と衛藤美沙の二人に気をもんでいた…
橋本(もう、二人も到着したのに…。)

彼女の背後では、対岸の浜辺から倒れた巨木を渡ってこちらに向かっていた畠中清羅と大和里菜の姿があった。
伊藤寧々と斎藤飛鳥と、昨日それぞれの身に起こった出来事について語り合っている…
その時、

ドーーーーーーン!!!

ドーーーーーーン!!!

橋本「銃声…!?れいか、みさ!!!」
325:2013/12/12(木) 15:34:47.67 ID:
「《アップデート》…。」
そうつぶやいた堀は、
海岸に倒れている桜井玲香と衛藤美沙をあとに残し、

堀「…。」

海岸を後にし草地の始まる森の方向へと去って行った…
326:2013/12/12(木) 16:11:00.97 ID:
329:2013/12/12(木) 18:23:29.06 ID:
その瞬間、
「…銃声…!!!」
南の海岸の談笑は止み、空気が凍り付いた。
その時、

ッドン!!!

崖に永島が西端の山で弾いた一発の銃弾が…
「きゃぁぁぁ!!!」

「みんな、落ち着いて!!!」
橋本は自らの動揺を落ち着けながら言った。
橋本「能力発動!《理論武装》!!!…日本には銃刀法がある…私達に向けて発砲があった…これは間違いなく銃刀法違反…。」
その瞬間、

ゴゴゴゴゴ…
厚い壁が立ち上がり…

橋本「…みんな行くよ!!!れいかとみさを助けに!!!」




弱った生駒を抱えたまま飛び続けていた井上小百合は、
「危なかった…!」
とうとう時間切れで、森のはずれにほど近い平原に広がる湖のほとりに舞い降りた…

井上「(…まあやは大丈夫かな!?すごい速さで走ってったけど…でもそれより)生駒ちゃん!!!大丈夫!?」
生駒「う、う~ん…。…あれ…?」
井上「…!?だいじょぶなの!?」
生駒「みたい…。」
井上「あんなにボロボロ泣いてたのに…!!!」
生駒「うん…。あのね多分、」
その時、

ドーーーーーーン!!!




市來「能力発動!《社交ダンス》!!!」斉藤「能力発動!《出っ歯たん》!!!」

「待って!!!」
川村は二人の後を追いかけながら…
川村「思い出した!!!全部思い出した!!!その恐竜のしっぽが森の中でおでこに当たったんや!!!」
330:2013/12/12(木) 18:35:57.49 ID:
ピューーーーーーーー…

西野「…口笛!?」
若月「あっちだ!!!みなみ進んで!!!」

若月は直感していた。
突然辺りに鳴り響いたこの謎の口笛の音の先に…

若月「みなみ早く!!!みんなが危ない!!!」



ドシン…ドシン…
松村「…みなみ!?」
深川「…えっ!?」
混乱する深川と松村…秋元は耳を塞いで部屋のすみで震えている…

中田「近づいて来る…!あぁっ!!!」
331:2013/12/12(木) 19:19:25.92 ID:
赤くぎらつく目。
太く大きな足に、細く小さな手…

目の前の何かを追いかけながら迫る恐竜の姿を見て川村真洋は全てを思い出していた…

森の中で…

「んー…《アップフロント》…?真洋の能力なんか分かりにくいな…。」
川村は約束の森のはずれへ向かいながら森の中で自身の説明書を読んでいた…
川村「うーん…。ん?」
その時、

…ドドドド

川村「へ?」

――ッヒュン!

川村「今なんか通っ」

ッペチン!!!!!





火を吹いた銃口…
硝煙の薄れたその向こうには…

井上「みおな!?!?」
堀「《アップデート》…。」

堀 未央奈の姿があった…

「…今は…能力が使えない…っ!でも!!!」
井上は倒れた生駒の前に立った。
井上「だから…それがなに…!?だからってここで…逃げるのは…正義じゃない!!!」
その時、

「うわぁぁぁ!!!能力発動《あみの背中》!!!」
332:2013/12/12(木) 19:35:25.65 ID:
秋元《釣りったん》     生田《ハモり芸》      生駒《少年漫画》     市來《社交ダンス》   伊藤《怒りのロンダート》   
伊藤《まりっかちゃんねる》 井上《スーパー戦隊》    衛藤《カボス》      川後《川後P》     川村《アップフロント》  
齋藤(飛)《扇風機》     斎藤(ち)《テレビゲーム》   斉藤(ゆ)《出っ歯たん》   桜井《ホイップ》    白石《ガールズルール》   
高山《裏声》        中田《なかだかな》     中元《ひめたんビーム》  永島《進撃のせいらりん》西野《どいやさん》
能條《あみの背中》     橋本《理論武装》      畠中《大時化》      樋口《坂之上くん》   深川《聖母》   
星野《9トン》       松村《さゆりんごパンチ》  大和《トマト》      若月《若様》      和田《リレー》

堀《デリート》《アップデート》


ピコン!

[堀 未央奈が、南西の海岸において桜井 玲香を攻撃しました。]

ピコン!

[堀 未央奈が、南西の海岸において衛藤 美彩を攻撃しました。]

ピコン!

[堀 未央奈が、南西の海岸において生駒 里奈を攻撃しました。]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「みおなが…!現れた…!でも…能力が…二つ…!」
山小屋では、パソコンの前で頭を抱えている伊藤万理華の姿があった…

伊藤「意味が…全然分からない…!!!何が起こったの…!!!」
その時、

ピロリン!

新たな音が…