1:2014/02/18(火) 20:47:48.31 ID:
本スレで書いた妄想をつらつら書いていこうと思います。あくまでも妄想なのであしからず
6:2014/02/18(火) 20:58:59.02 ID:
「この案件だが是非あなたたちに任せたい」


白髪で高級なスーツを身に纏う初老男性と契約書を交わして握手をする。
握手か。昔握手のためにいくら金を費やしたのだろう。
可愛いアイドルの子と握手するのが楽しみでがむしゃらに働いたな。

そのおかげで俺は出来る男になった。
そして色々なものを手に入れることができた。
それは決して金で買えるものじゃない。


「よくやったな。どうだ?祝いにみんなで飲みにいかないか?」
「部長。お誘いはありがたいのですが僕を待っている人がいるので…」
「いやあいつまでもラブラブだな。昔はよく朝方まで飲んでいたお前が今や家庭重視の夫とはな。まああの奥さんなら納得だな」
「すみません。では、お疲れ様です」

俺は昔、日中は仕事にがむしゃら、夜は上司や部下と酒を飲んでは朝帰りで休日はもっぱら握手会やイベントに出向くのが習慣だった。
だが、俺の人生は一人の女性と出会ったところで大きく変化した。
それまでは5時で家に帰る家庭持ちのサラリーマンを見下していた。
だが、今は彼らの気持ちが理解できる。
7:2014/02/18(火) 21:02:38.96 ID:
愛する嫁が料理を作って待っている。そう思うだけで帰宅願望が強くなる。
帰りの電車の中でひたすら今日の夕食は何なのかを妄想するのが何よりも心地良い。

駅の改札を出て徒歩15分のマンションへの道のりをワクワクしながら歩く。
おっと。帰りに玉葱とカレー粉を買ってきてとメールがきていたな。


「いつもありがとうございます。奥さんに頼まれごとですか?」
「ああ。全くど忘れが多くて困ったものだ」

週に五回は立ち寄るコンビニ。いつも決まってレジに立つ子がとてもカワイイ。
だが、外に出れば浮かぶのは嫁の笑顔だ。

マンションに着いてまずオートロックの扉を開けてエレベーターへ向かう。

「あっすみません!」
そこへコートを着た女性が駆け寄ってきた。確か5階に住んでいる子だ。

「ありがとうございます」
「いえいえ。それよりもかなり慌ててどうしたんです?」
俺はハァハァと息を切らす彼女に声をかける。バッグから出したハンカチで額の汗を拭う姿に思わずドキッとしてしまった。

「実は今日大事な日なんですよ。だから早く帰りたくて…」
「そうだったんですか。いや僕が乗っていて幸運でしたね。きっと素晴らしい日になるに違いない」
そう言っているうちにエレベーターは5階で止まる。彼女は軽く会釈をしてエレベーターを降りた。

様々な誘惑があったものの嫁に対する愛は不変だ。俺は部屋のある階に着くと一目散にエレベーターを降りる。
早歩きで部屋に向かいドアの前で一呼吸置いて扉を開けた。

「お帰りなさい。今日は昨日より5分遅刻だぞ!」
「ごめんごめん。だって頼まれたモノを買ってたからさ。はい。カレー粉と玉葱だ」
「ありがとう。ごめんねわざわざ」

袋を手に持って謝るその姿に俺の心はまさにズッキュンされた。出来る男もここでは完全に射抜かれた歩兵に過ぎない。

「いや、いいんだ。愛情たっぷりのカレーを頼んだよ。真夏」
8:2014/02/18(火) 21:04:52.35 ID:
「ところであの商談はまとまったの?」
「ああ。ウチが勝ち取ったよ。まああんなのは朝飯前だ」
「そうだと思って一生懸命作った甲斐があったな」
「作った?」

真夏はそう言うと急に照明を消した。

「うわっ!おい資料書いてる途中だぞ」
「ねぇパソコン閉じてくれる?」

俺はよく分からないままノートパソコンを閉じた。だが作ったという言葉が引っ掛かった。
しばらくすると蝋燭の火が灯っているのが見えた。
そして、急に照明がついてその眩しさに目を瞑る。
すぐに目を開くとそこには俺の大好きなケーキの上に20個の蝋燭が刺さっていた。

「何だ?誕生日はまだ先だぞ」
「違うよ。今日は私と結婚してから成功した商談が20回を記念して」
「え…?」

俺自身も忘れていた。結婚してから4年間で既に20回もまとめてきたんだな。
それを覚えていた真夏に俺は改めて心をズッキュンされた。

「さぁせっかくだから祝おうよ」
真夏は肩を出したグラスにワインを注ぐ。その姿がまたたまらない。
こんなに優しくて美しい嫁がいる俺はとんでもない幸せ者だ。やはりがむしゃらに頑張った努力は報われる。
この素晴らしき時間がずっと続くものだ。今の俺はそれを疑わなかった。


そう彼女と出会う日までは…
9:2014/02/18(火) 21:07:37.48 ID:
「ずっきゅーん!朝だぞ~」

突然嫁の声がして俺はベッドから起き上がる。そうスマホのアラームだ。
世界に一つしかない大切な目覚まし。これがあるから朝も辛くはない。

寝室の扉を開けるとそこから焼けたソーセージの匂いや玉子焼きの匂いが漂う。
何とも食欲をそそる。そして何よりも朝から精力的に弁当と朝食を作る真夏の姿を見るだけで良き目覚めだ。


「パパ。はい、新聞」
歯を磨き、髭を剃り、洗顔を終えた俺の前に3歳の息子、春真が新聞を持って立っていた。
そう理想的な嫁を手に入れた後に出来たかけがえのない宝物だ。
春真は生れたのが桜咲く4月だったのがきっかけで真夏が名づけた。俺も気に入っている。

昔は朝食と言えば駅前のコンビニとかでおにぎりとパンを買って会社で早出で仕事しながら食べたもんだ。
だが、今は違う。嫁の作ったご飯に味噌汁、弁当で余った玉子焼きとウインナーとほうれん草のおひたし。
家族3人の束の間の団欒でスタートする朝は格別だ。

「おっタコさんウインナーか…いいなあ俺のおふくろはそんなもん入れてくれなかった」
「しかもこれ誰かに似てると思わない?」
「あっパパだー」
「おいおい。もっとパパの顔はイケてるぞ」
「自分で言うそういうこと?」

そうやって何気ないことで笑う日常の幸せ。こういう小さい幸せが大事なんだと思う。

この団欒の時間はテレビの占いの時間が無情に引き裂く。
俺はドルチェグストで淹れたコーヒーを飲みながら時計を見る。

「おっと出兵のお時間だ。さぁ今日も一日戦ってきますか」
俺は新聞と鞄を持って出勤に備える。

「じゃあ今日も6時までには帰れそうだから」
「分かった。今日の夕飯はね…」
「待て。それ以上言うな。俺の帰りの電車での楽しみを奪うなよ」
「ごめんごめん」
「じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃ~い」

「あれ?パパとママはチューしないの?」
息子の突然放った一言に俺と真夏は一気に顔を赤くする。

「ちょっと春真!どこでそんなの覚えたの?」
「昨日ママが見てたドラマでやってたよー」
「ハハハ。さすが我が息子だ。正直でいいよな。おっと遅れちゃうから」
俺はそう言うと玄関の扉を閉める。そこからは嫁に溺れ子煩悩な男から一気に企業戦士の顔に変わる。
颯爽と通路を歩き、エレベーターに乗る。




「さぁ準備してね。もう少しでバス来ちゃうんだから」
「ママー。パパお弁当忘れてるよぉ」
「ええ!!ウソでしょー!!」
10:2014/02/18(火) 21:08:31.59 ID:
あれ?弁当がない?しまった。うっかり忘れてしまったぞ。
電車の時間まではまだ少しある。駅まではペースを早めて歩けばいい。
俺はいつものコンビニでおにぎりとパンを買おうと立ち寄った。

「あれ?昨日の…」
「ああエレベーターの」
俺がフレンチトーストに手を伸ばした瞬間に触れた女性の手は昨晩エレベーターに駆け乗った女性だった。

「あっどうぞ。俺はそのコロッケパンでいいですから」
「いえいえ。そんな昨日も我儘したのに今日もってわけには…」
「いいんですよ。それにここのコロッケパンは好きなんでね」
「何かすみません」

俺は女性にフレンチトーストを譲り、おにぎり2個とコロッケパン1個とコーヒーを買って店を出た。
歩いていると先に店を出た女性が歩いている。

「おや?あなたもあの駅を利用してるんですか?」
「そうですけど。あなたも?」
「ええ。一緒に行きましょう。たまには話しながら通勤というのも悪くないでしょう」
「そうですね。いやここに越してきてまだ1か月ぐらいなので通勤はいつも一人で寂しくて…」
「そうだったんですか。おっとそういえば名前をまだ伺ってなかったですね」
「ごめんなさい。私乃木坂バレッタ生命に勤めてる深川と言います。これ一応名刺です」

乃木坂バレッタ生命と言えば米最大手の生命保険会社バレッタ生命と日本最大手の乃木坂生命が合併した最大の生命保険会社だ。
その保険外交員となるとかなり優秀だ。確かウチの会社の社員も何人も契約してよく外交員が勧誘してるな。

深川麻衣。

このおっとりした笑顔がまさに優秀な外交員だと断定して間違いなさそうだ。

「ほぉ。子供向けの保険をやっているんですか」
名刺を見るとどうやらこども保険を主に販売している部署にいるようだ。

「ええ。最近は早いうちから保険に入る人も多いんです」
「ああ僕の名刺も一応渡しておきましょう」
「え?あの乃木坂商事に勤めてるんですか?しかも第一営業部ってすごくエリート揃いって聞きますけど」
「いやぁそんな大したことないですよ。僕なんか浮きまくってます」

そんな他愛もない話をしているうちに駅に着いた。
するとどこかからか聞き慣れた声が聞こえた。

ふと振り返ると汗を流して弁当を片手に走ってきた真夏の姿が見えた。
11:2014/02/18(火) 21:09:56.73 ID:
「おい真夏。こんなところで何してんだよ?」
「だって…ハァハァ…お、お弁当忘れちゃってるし…」
「わざわざ走ってきたのか?鈍足なのに無茶しやがって」
「だってあなたがいけないんでしょ?愛妻弁当を忘れるなんて…ハァハァ…」

弁当を届けるために体力もないのに無理をしてくるとは。俺をそこまで思ってくれているとは。
俺は朝から感動していた。

「それより春真はどうしたんだよ?もうバスが来る時間だろ?」
「それなら大丈夫。隣の寧々さんにお願いしておいたから…」
「ならいいけど。とにかくこれ持って帰れ。はいタクシー代だ」
「ありがとう。じゃあ待ってるね。ん?この方は?」
真夏はふと深川の方を見る。深川は目が合うと軽く会釈をする。

「ああ。同じマンションに住む深川さんだ。昨日偶然エレベーターで会ってね」
「そうだったんだ。あっ妻の真夏です」
「深川です。そうですか。奥さんとお子さんもいらっしゃったんですね」
「深川さんは子供向けの保険を売っているんだ。そうだ深川さん。今度一緒にお食事でもどうです?妻は手料理を振る舞うのが好きでね。じっくり保険の話も聞きたいですし」
「えっ?」

深川は驚いた表情を見せる。そして少し曇った表情に変わる。
あれ?俺何か余計なこと言ったかな?何故か心の奥に何かが突き刺さった感じだ。

「ありがとうございます。考えてみますね。じゃあ私は電車が来ちゃうのでこれで…」
深川はそう言って一礼すると足早に改札を通って人混みに消えていった。

「ヤバイ。じゃあ俺も行くわ。ありがとう」
俺も真夏を見て足早にホームへ駆けて行った。
12:2014/02/18(火) 21:10:50.39 ID:
乃木坂商事第一営業部。各所の営業部で優秀な営業成績を収めた精鋭が集う集団。
各所でトップに立った者同士が集まる場所で結果を出すのは非常に難しい。
クライアントは年商何十億は当たり前で動くお金も物も想像を遥かに絶する。
なかには国家すら関わる事業も手掛けるのだ。

「おお。ちょうどよかった。君を探していたところだ」

部長に声をかけられた俺は部長のオフィスに入る。扉を閉めてブラインドを閉める。
これだけで重要な用件を言うのは安易に想像できた。

「部長。お話とは何ですか?」
「うむ。心苦しいが今進めてるプロジェクトは第二営業部に任せようと思っている」
「何故ですか?あのプロジェクトは社運をかけた一大プロジェクトですよ」
「ああ君があれを取るのに苦労しているのは誰よりも私がよく知っているよ」
「だったら何故?」
「実はあの西野鉄鋼の社長令嬢さんがキャラクターブランドを立ち上げることになってな。そのプロジェクト責任者になってもらいたいんだ」
「待ってください部長。私がやってきたのは鉄道とか鉄鋼ですよ。キャラクターとかは分かりません」
「勿論だ。そこでキャラクタービジネスに精通した人材を集めておいた」
「何故私なんですか?だったらそのビジネスに精通した人間がやればいいでしょう」
「よく分からんが令嬢さんが社長に君じゃないと嫌だと言ったそうだ。西野鉄鋼は最重要取引先だ。失えば我が社は終わりだ」
「つまり。選択肢はないということですか」
「そういうことだ。頼むぞ」

俺は不安を隠せないなか部下がノックをして部長室の扉を開ける。

「部長。西野七瀬様がお見えになられました」
「分かった。お通ししろ」

大阪に本社を置く日本最大手のにして世界でもシェア70%以上を誇る鉄鋼企業西野鉄鋼の創業者一族の一人で社長令嬢である西野七瀬。
彼女が俺の今ある平凡でささやかな幸せを脅かす存在になるとはこの時は想像することもできなかった。
13:2014/02/18(火) 21:15:52.62 ID:
この2人なら嫁と愛人が逆だろ
どう考えても
18:2014/02/18(火) 22:36:21.44 ID:
「こちらが今紹介した西野七瀬さんだ。今回世界的にキャラクタービジネスを始めることとなった」
「初めまして」
「いえ。あなたは覚えてないでしょうけど初めてじゃないんですよ」

西野の一言に俺は疑問を抱く。どこかで会った?いくら記憶を掘り起こしても浮かばない。

「どこかでお会いしましたかね?」
「多分覚えてないのも無理はないかと。何か恥ずかしくて遠目で見てたので。そうあれは確かベトナム新工場建設のときです」
「ああ。5年前に手掛けたやつですね」

5年前に海外事業部にいたときに最初に成功した鉄鋼関係のプロジェクトだ。日本最大手の西野鉄鋼の東南アジア進出の橋渡しをしたな。
ここから俺は出来る男としての軌跡が始まった。トントン拍子に鉄鋼関係で成功を収めて今の地位についた。
その頃から俺を知っているとは。俺はまた疑問がひとつ増えた。


「ところで部長。プロジェクトの概要は?」
「あっああ。確かコレだ」

俺は部長から渡された資料に目を通す。どいやさん?うわっ何なんだこのキャラクターは。これを世界に売り出すとか正気か?
ビジネスマンとして見た瞬間失敗の可能性が高いと予測できた。

だが「失敗すると思うのでやめましょう」なんて言えば俺は終わりだ。せっかく手に入れた家庭や地位を失ってたまるか。
残念ながら生まれながら持っている権限もあるということだ。
だが、大金持ちが幸せとは限らない。僅かながらの金で狭いマンション住まいだが可愛い嫁と息子のささやかな暮らしが一番いい。
だからこそ俺は西野のこういう手法はあまり好まない。

「とにかくやってみるしかないですね。ただ、最終的に責任を持つのはあなただ。そこは覚悟していただけますね?」
「もちろん。金持ちの道楽のつもりじゃないしビジネスの厳しさは私も分かっています」
「だったら安心だ。必ず成功させましょう」

やるしかない。成功すればまた何かを得られるはず。俺はそう思い腹を括るのだった。
23:2014/02/18(火) 23:33:16.32 ID:
乃木坂商事第一営業部の窓口。ここではクライアントとの商談やアポを取ったり日程調節をする。
勿論やってきたクライアントを案内するのも重要な仕事だ。

だが何もない時に窓口に座る二人は何やら噂話をする。

「ねぇねぇかりんちゃん。聞いた?」
「聞きましたよ。西野鉄鋼のお嬢様がキャラビジ持ち込んだらしいですよ」
「え?そうなの~。アメイジング!」
「まさか高山さん知らなかったんですか…?」
「でもいいよなぁ~。お嬢様ってだけで自分の書いたものを大手商社通じて売ろうっていうんだからさぁ」
「仕方ないですよ。生まれながらにしての大金持ちなんだし」
「あ~あ私も金持ちだったらここじゃなくてハワイビーチで毎日のんびりと過ごすんだけどね~」
「何ですかハワイビーチって」

全く今日も他愛もない会話をしている。
毎日ボロボロになるまで闘う企業戦士とはまるで無縁な二人が羨ましくも腹正しくも思える。

「そんなにハワイに行きたければもっと働くんだな」
「うわあああああああああああ」

突然驚いた表情で叫ぶのが高山一実。ルックスは良くてクライアントの評判もいいがいかんせん言動と思考回路がズレている。
だが、仕事は出来る。いくら窓口と言えど優秀でなければならない。時に俺は彼女に助けられたことも多々ある。
そして隣にいるのが伊藤かりん。言動も対応もピカイチ。頭の回転も速くて仕事も優秀だ。
高山を補佐する意味でこの二人は営業第一部を陰で支える屋台骨な存在としては今までで一番優秀だろう。

「それで頼んでおいたことは?」
「はい。10時に第二会議室しっかりおさえました。クライアントにも報告済みです」
「さすがはかりんちゃん。仕事が早い」
「いえ。窓口として当然です」
「あっそう。じゃあ褒美にこれ君にあげるよ」
出来る男は窓口の女の子にも気を遣う。第一部の営業マンは基本エリート意識が高くて威張り腐っている奴らが多いからこれだけでも心を掴める。

「え?これ行きたかったエステの無料体験チケットじゃないですか!」
「ひゃあ~アメイジングゥ~!!」

驚く二人の声を聞き、俺はただ颯爽とデスクへ歩く。
26:2014/02/19(水) 00:28:35.02 ID:
午前10時。

第二会議室には新たなプロジェクトメンバーが集う。

今までは肉に飢えた猛獣並みの野郎どもとやってきたが今回は違う。
今回集められたのはキャラクタービジネスや女性をターゲットにしたビジネスに精通した女性メンバーばかりだ。
しかも各部署から集められた。聞くところによると彼女たちを営業第一部に異動させるために5人が異動になった。
つまり5人の女性がエリートに昇格し、5人のエリート戦士が転落したということだ。
お嬢様の描いたキャラクターのビジネスで他人の人生を大いに狂わせる。

「さて。これからこのキャラクターどいやさんの販売展開に関するプロジェクトの第一回会合を始める」
スクリーンの前に立つ俺は新たに戦うメンバーの顔を見渡す。

「じゃあまずは自己紹介を。何しろ今回みんなの顔を見るのは初めてだ。信頼関係がなければこの戦いは勝てない。まずは君からだ」
俺はまず右隣に座っていた女性を指名した。

「営業第三部からきた桜井玲香です。主に版権ビジネスのリーダーをやってきました。実績はご存知でしょう。よろしくお願いします」
「君は我が社でも版権や商標、著作権には精通しているみたいだね。君にはサブとして俺を補佐してほしい。では次は君だ」

「はい。営業第五部からきた中元日芽香です。私は主にこういったリボンの販売を主にやってました」
「確か妹さんはさくら物産に勤めていたね。彼女はなかなかのやり手だ。まさか姉が我が社にいるとは思わなかったよ」
「ええ、まあ…」
「とにかく君はグッズ販売について任せたい。妹さんをここで見返してやろうじゃないか。じゃあ次は君だ」

「はい。広報部から来た中田花奈です。上から読んでも下から読んでも同じなので多分覚えやすいかと。あと営業は初めてでよく分からないですけど」
「気にするな。君は芸能関係に精通してるみたいだな。広報戦略も大事だから代理店との交渉などを頼みたい」
「お任せください」

彼女が立ち上がった瞬間に揺れる胸を見て少し動揺したが実にいい武器になるに違いない。

「よし、じゃあ君」
「はい。海外事業部から来た山崎怜奈です。英語ぐらいしか取り柄ないですけど…よろしくお願いします」
「英語は武器だ。君は事業部の窓口で海外クライアントを相手にしてきたそうじゃないか。このビジネスは海外進出がゴールだ。君は大きな戦力だ」

彼女に足りないのは自分に対する自信だ。窓口だったから当然バカにされていたのだろう。海外事業部の奴らはみんなそうだ。
だが彼女の英語力は我が社でもそういない逸材だ。だからこそ自信をつけさせて戦力になってもらいたい。

「最後は君だったね」
「はい。秘書課にいました堀未央奈です。よろしくお願いします」

秘書課はこの会社では一度入ればあまり異動のない部署だ。しかも前任は社長秘書。何故彼女がいきなり営業第一部でこのメンバーに。
俺はこの人選だけが納得がいかなかったがどうやら西野のお嬢様が一枚かんでいるのは間違いなさそうだ。

「桜井玲香、中元日芽香、中田花奈、山崎怜奈。そして、堀未央奈。俺を入れた6名でこの戦いを制しよう。では次回までの業務割だ」

俺は大きな瞳でじっと見つめる堀の視線が気になりつつも業務割を配布した。
30:2014/02/19(水) 00:44:32.89 ID:
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする


【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員

【コンビニ】
33:2014/02/19(水) 00:58:57.32 ID:
なかなか面白かった
ただ単に真夏好きの暴走妄想じゃなくて乃木愛があっていいね
さゆりんご母娘のほうとは違ってこっちは乃木坂での絡みは持ち込まず主観的だし
妄想がかぶらなくてどちらも同時に読みやすいw
焦らずゆっくり暖めながら書きつづけておくれ
37:2014/02/19(水) 01:09:28.67 ID:
ネタスレかと思ったら小説スレだったか
応援するよ
38:2014/02/19(水) 01:23:15.64 ID:
コンビニの店員は誰か気になるなあ
52:2014/02/19(水) 21:28:46.58 ID:
「ただいま~」
「あっお帰りなさ~い」
相変わらずこの日常のやり取りに幸せを感じる。

あれ?靴の数が多いな?誰かお客さんでも来ているのか?
俺はリビングに向かうとそこには主婦仲間の伊藤寧々がいた。
彼女は越してきた時から仲が良く春真と同じ幼稚園に通うママ友でもある。

「あっいらっしゃい」
「お邪魔してます」
「あっ寧々さん。今日は春真を見てもらったそうで申し訳ない。僕が弁当を忘れたばっかりに。これお詫びに」
俺はそう言うと取引先にもらった鰹節のセットを渡した。何でも焼津産の高価なものらしい。

「え?いいんですかこんなもの」
「ええ。ウチにはまだたくさんあるもんでね。それに寧々さんの料理はまた格別に美味しいからね」
「は?じゃあ私のは?」
「この世で一番美味しいに決まっているじゃないか」

出来る男のお世辞も真夏の前では余計な火種を落とすだけだ。
出来る夫を見せるのは企業戦士で戦うより至難の業だ。


「あっ!?」
「どうしたんだ真夏」
「いっけない。ポン酢買うの忘れちゃったどうしよう…」
「またか。本当にドジだなぁ。いいよ近くのコンビニに売ってるから買ってくる」
「そんないいよ。私が行くから」
「気にするな。こんな寒空のなかでお前一人で行かせられんよ」

これはお世辞でもカッコつけたいからではなく本心だ。愛する嫁を一人で買い物に行かせる旦那じゃ失格だ。

「あとはいいのか?」
「うん。気をつけてね(。・ω・)ノ゙」
「ああ。いってきます」
俺はそう言うと玄関を出てコンビニへ向かった。
56:2014/02/19(水) 22:42:11.12 ID:
「うぅ…今日は一段と寒いなぁ」
コンビニに入った瞬間に寒空の中歩いて冷え切った体に店内の暖房の暖かさが身に染みる。
ふと見渡すとそこにはいつも夜にいるバイトの女の子がレジの前に立っていた。

俺は日用品のコーナーに向かい最後の一本であるポン酢を手に取ろうとした瞬間またも誰かの手に触れた。
ふと見ると触れた手の相手は深川であった。

「深川さん。あなたでしたか」
「あっ偶然ですね。二度も同じような境遇になるなんて」
「まったくだ。あっポン酢ですか?」
「ええ。今日は寒いしお鍋にしようと思ってスーパーで買ってきたんですけどポン酢だけなくて…」
「弱ったなあ…。実は妻に頼まれてましてね。あのスーパーにないとなると隣町までいかないといけないしなあ」
「あっいいんですよ。良かったら…」
「いやいや。せっかく具材まで買っておいてこれがなければ意味がないでしょう。これはあなたが…」
「いえ。そんな奥さんに申し訳ないし…」

俺は迷った。

ないとなれば隣町まで歩いて20分。そうなれば真夏が心配する。

だからと言って深川の夕食を台無しにするわけにもいかない。

「すみません」
俺はレジの前にいる女の子を呼んだ。普段はレジでしか会話しないが初めて呼んでみた。
名札には「橋本」と記されている。この時初めて俺は彼女の名を知った。

「何でしょうか?」
「ああ。このポン酢なんですが在庫はないんですか?」
「あぁ~…。生憎在庫は切らしてて次に入荷するのは2日後になるかと…」

やはり呼んで正解だった。越してきた頃からずっとここでバイトをしている彼女ならそういう事情にも詳しいはず。
俺の読みは当たっていた。ただ、在庫が切れているのは計算外だが。

俺は考えに考えた末にある結論に達した。

「深川さん。もし良かったら家に来ませんか?丁度ウチも今日鍋なんです」
「えっ!?」

驚くのも無理はない。何しろ会ってまだ2日も経ってはいない人間がいきなり自宅へ食事に誘うのだから。
恐らく彼女の人生経験でもこれは初めてのことだろう。

だが、彼女の食材を無駄にせずかつこの1本のポン酢を活かす方法はこれしかない。

「そ、そんな悪いですよ」
「いえ構いません。妻は誰かに手料理を振る舞うのが好きでね。今日も同じマンションの人を誘っているんです」
「いやでも私とか場違いじゃ…」
「それに鍋は大勢で食べた方が美味しいでしょう。一人鍋よりはマシだ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…」

出来る男はその場の危機状況も打開し、誰も不幸にはさせない。
59:2014/02/19(水) 23:02:06.87 ID:
「ただいま」
「おかえり~」
「これポン酢。そして、さっき電話で話した通り深川さんをお連れした」
今朝の駅で会ったとき以来の再会だ。まさか夜になって自宅で共に食事をすることになるとは誰も想像しなかっただろう。

「すみません…」
深川は頭を下げる。それを見た真夏は笑顔で迎える。

「いえ。いいですよ。それに深川さんの保険の話も聞きたいし」
一般家庭では考えられないだろう。普通旦那が同じマンションに住むとはいえ赤の他人の女性を自宅に入れるなんて。
通常なら浮気などを疑われ、一触即発になるか最悪の場合離婚の引き金にもなりかねない。

だが真夏は喜んで迎え入れた。それは俺を全面的に信頼してくれているからだ。
もちろん彼女は誰かをもてなしたり、誰かに手料理を振る舞うのが趣味であるがそれだけではない。
俺が築き上げた信頼と愛情があるからこそ今のこの状況があるのだ。

「じゃあ頑張って作るね。あっ深川さん。良かったらそこでワインでも飲んでてください」
真夏はそう言うとエプロンを身に纏い、料理を始めた。その間のキッチンは決して立ち入ることの出来ぬ絶対領域となる。
俺はダイニングで深川と寧々にワインを注いで身の上話でその場を盛り上げ、子供たちの遊び相手になる。


それから1時間ほどで真夏特製の鍋が出来上がった。深川が買った食材を無駄にせず、なおかつとても美味しい。
特に一日会社で戦い続けて帰宅後は寒空を歩いて色々あって疲弊した俺の体にとても染み渡る。

「それで学資保険って言うんだっけ?それについて…」
「あっ資料ありますよ。良かったら…」

当初はガチガチに緊張した深川も今では話を弾ませている。さすがは一流の保険外交員だ。伝え方が上手い。
深川の笑顔溢れる説明の仕方を見て俺は出来る女性だと感じた。

一見素朴で強い印象は受けないだろう。

だが生命保険は不安や最悪の事態に備えるものだ。俺みたいに計算高く勝ちにこだわる姿勢がむき出しの人間には売れない。
やはり安心感を与えられる印象。それは深川には持っている。だから出来る。

現に真夏や寧々も幼いわが子を見ながら話をしている。母親として子供の万一のことを真剣に考える。
その表情や思いを瞬時に読み取り笑顔で話を振る。そして二人の笑顔を作り出す。
また、小さい子供の扱いも上手い。子供と親の気持ちを理解している。

俺は出来る男だと自負するが深川が俺以上に出来る女であったことに驚きを隠せずひたすらワインを飲んだ。
66:2014/02/19(水) 23:50:24.88 ID:
「いやぁ今日は随分濃い一日だったよ」
「ホントに。あんなに大勢で食事を食べたのは久しぶりね」
「本当に勝手気ままな旦那ですみません」
「いいのよ。私も今日料理やってて楽しかったし。保険のことも色々分かったしね」
「俺は幸せ者だよ。こんな素晴らしい妻を持ててね」
「私だってこんな出来る夫がいて幸せ」

仕事が出来る女がいるように家庭で出来る女もいる。真夏はまさにこの家で出来る女を発揮している。
何気ないはにかんだ笑顔の癒し効果は計り知れないものだ。これは誰にも真似ができない。

「さぁ疲れたから寝るとするよ。君も明日は早いだろ?」
「そうだけどさ…」
真夏が何か言いたそうだった。出来る男はそれを事前に推測できるものだが真夏が何を言いたいか理解できなかった。
ワインの飲みすぎかな?いや酔いはさほどないし。一体何が言いたいんだ。

「だけど何?」
「いや、そろそろ春真にもさ…」
おいおい冗談だろ。確かに最近夜はご無沙汰だが、まさかこんな時に言うかね。
ただ確かにこのところ仕事ばかりで疲れて眠ることが多くてサービスもロクにしていなかった。
ならば今ここで恩を返すのが得策と言えよう。

俺はそう思って声をかけようとした瞬間寝室の扉が開く音が聞こえた。
ふと明かりを灯すとそこに立っていたのは3時間前に眠ったはずの春真だった。

どうやら起きてしまったらしい。

「ねぇ…このえほんよんで」
愛するわが子の要望を断るわけにはいかない。春真はベッドの真ん中に眠り込み、真夏が絵本を読む。
それを聞いていた俺は何だか心地よくなってそのまま眠りについた。
70:2014/02/20(木) 00:33:15.81 ID:
「あの…お嬢様。そろそろ離してもらいたいんですけど…」
「ごめ~ん。だってあみあみの背中って何か温かいからさ」
田園調布にあるとある豪邸の一室にいる西野七瀬とメイド服を着た世話人。

そうここは俺が深い眠りについている間に起きた出来事だ。

「お嬢様。堀様がお見えになりました」
「きいちゃん。お通しして」
もう一人メイド服を着た世話人が一礼して扉を閉めた。

しばらくして世話人とともに堀が一礼して部屋に入る。
「ありがとう北野さん。あら?能條さんもいらしたのね?また背中に密着を?」
「お嬢様のご要望を叶えるのも仕事なんで」

「それはそうと例の資料は?」
西野がそう言うと堀は持っていたヴィトンのバッグから一枚のファイルを差し出す。
受け取った西野はそれに目を通す。表紙には『部外秘』と書かれている。我が社の社員データだ。

「これ見つかったら私は終わりですよ」
「大丈夫。そんなんなかったことにしてやるわ。私が言えば誰も逆らうことはできへんし」
「しかし何故ですか?あなたなら何億いえ何十億、何百億と稼ぐ男性をいくらでも釣れるじゃないですか?それなのに…」
「何であの男にこだわるか…そう言いたいんやろ?」
「ええ。正直私には理解できません。それは恐らくここにいるお二人も同意されるのではないでしょうか?」
堀が二人を見ると西野もふと二人を見つめる。二人はまるで鬼に睨まれたかのように驚き、体が震えあがっていた。

「せやなぁ。確かに私なら日本一の大金持ちでも簡単や。でもそんなん面白くないやん」
「え?」
「普通の家庭に生まれて普通の学校に行って普通に就職して普通の家庭にある男ってどんなんか知りたくなってな」
「それが彼なのですか?」
「せや。彼に初めて会ったとき言ったんや。『お金で決して買えないものがある』って…」
「お金で買えないもの…?」
堀、北野、能條は首を傾げた。そんな二人を見て西野は笑みを浮かべながら椅子に腰かける。

「その買えないものが欲しくなってな…。そう、彼の心や」
西野の表情を見て何か不穏な空気を感じる二人。だが堀だけは違っていた。

「お嬢様。私に出来ることは何かありませんか…?」
「さすが堀ちゃん。すぐに社長秘書に登りつめただけあって出来る女やわ」
「いえ。私はお嬢様の願いを叶えるためなら何でもやる所存です」

西野と堀はお互いに笑みを浮かべて大声で笑いだす。
それを見た北野と能條はただ立ち尽くすしかなかった。
71:2014/02/20(木) 00:34:23.56 ID:
ハッ。

何だ今の夢は?何故お嬢様の笑みが?何故堀君の笑顔が?
俺は何とも後味の悪い夢を見て相当疲れていると感じた。

「おはよう。どうしたの?顔色悪いぞ」
「ああ。昨日ワインを飲みすぎてまだ残っているみたいだ…」
俺はカプセルを取り出してドルチェグストでコーヒーを淹れる。

「パパー。このお姉ちゃんすごーい!!」
春真がテレビを指したので見てみるとそこにはインタビューに答える西野七瀬が映っていた。
それを見て夢がフラッシュバックしてコーヒーを吹いてしまった。

「きゃあ!」
「パパきたなーい」
「あなたどうしたの?何か変だよぉ」
妻と息子の声はしばらく俺の耳には届かなかった。何なんだこれは。
俺はただ西野のインタビュー映像が映るテレビを呆然と見つめていた。



これが俺のささやかな幸せを脅かす引き金になっていくことをいくら出来る男であっても予測することは不可能であっただろう。
72:2014/02/20(木) 00:36:31.39 ID:
ということで明日は朝から仕事なもんでここまで
登場人物一覧更新したら寝ます

明日も夕方以降に出来たら更新しようかと思ってるんで

んじゃおやすみ(。・ω・)ノ゙
74:2014/02/20(木) 00:40:21.51 ID:
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

【西野家】
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)


【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい

【コンビニ】
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員
93:2014/02/20(木) 21:31:24.25 ID:
これまでの嫁の真夏さんと愛人のなーちゃんは…

俺は出来る男。仕事では結果を出して上司からも一役買われている。
家庭では料理が得意で笑顔が素敵な妻の真夏に幼き息子春真と共にささやかな幸せな生活を送っている。

俺はある日上司から世界最大の鉄鋼会社西野鉄鋼の社長令嬢西野七瀬が始めるキャラクタービジネスのプロジェクトリーダーに抜擢された。
しかもこれは立ち上げた西野本人から社長を通じての指名だった。
初めてで専門外だがもしも断ったりしたら俺はすべてを失う。選択肢のない中で俺は引き受けた。

プロジェクトは女性中心。個性的なメンバーと共にプロジェクトは始動した。

そんな中でプライベートは充実している。同じマンションの住人で乃木坂バレッタ生命の深川麻衣さんと出会い自宅にも誘った。
全ては順調で幸せだ。

だが、西野はその裏で何やら企んでいる。どうやら俺をプロジェクトリーダーに選んだのには何か策略があるようだ。

果たして俺は順調な生活に大きな変化を迎えるようになってしまうのか?




今宵も出来る男が仕事で家庭で美しき彼女たちに翻弄される。
94:2014/02/20(木) 21:32:25.22 ID:
デスクに腰かけた俺は色々あって読めなかった日経新聞を鞄から取り出す。
一番楽しみなのは『私の履歴書』だ。今月は今野義雄という音楽プロデューサーだ。
彼の人生遍歴は読んでいて実に参考になる。紆余曲折を経て辿り着いた地位。
出来る男になるまでを見ているとやはり生まれながらの才能を努力で磨いてきたのだと感じた。

新聞を閉じて片付けると目の前に窓口の高山の姿があった。

「うわっ!おいビックリするじゃないか高山君」
「あ、あの。西野さんがお見えですけど…」
高山は有名人や地位の高い人間と会うと見境がつかない行動をとる。
普段なら声掛けもできるが彼女も今朝の情報番組を見たのだろう。

「分かった。応接室へ案内してくれ」
「はい。かしこまりましたぁー!!」
高山は何故か敬礼して駆けて行った。全く持って謎が多い。
恐らく人間工学の研究者なら興味を持つだろう。

俺は資料を持って応接室へ向かう。
何か今回の仕事は気乗りがしない。いつもは仕事となればアドレナリンが全開になるのだが今回は違う。

やはり仕事とはいえ一流企業の創業者一族のお嬢様の召使いになったような気分だ。
だがお嬢様とはいってもクライアントはクライアント。ビジネスマンとしてどうであれ任された仕事を成功させるのが仕事だ。
いくら無謀であっても結果を出さなければ終わりだ。


「すみません。資料を集めるのに時間がかかってしまって」
「いえ。こちらこそ突然押しかけちゃってごめんなさい」
互いに笑みを浮かべて挨拶を交わすもまた今朝見た夢の残像が頭をよぎる。

「それよりも今朝のニュース見ましたよ。なかなかいいことをおっしゃっていた」
「いえ。そんな大したことは…」
「自分の運命と財力を多くの弱き人たちに貢献したい。普通はなかなか言えるものじゃないですね」
「私は生まれながら巨大な財力を持っていてそれを自分の欲だけに使うのはどうかと思うて…」
「一見社会奉仕の思い溢れる素晴らしいものですが、あなたはかなり私欲の強いお方だ」

しばらく沈黙の時間が続いた後、プロジェクトメンバーが揃ってミーティングを始めた。
今日はとりあえず立ち上げまでのプランニングの方向性を確認し、決定した。
プロジェクトメンバーは全員が優秀で俺の求めていた以上の仕事をしてきた。
女性だからといっても男性企業戦士よりも素晴らしい仕事が出来る。それを知っただけでもこの仕事をやった甲斐があったと思う。

二時間ほどでミーティングは終わった。
95:2014/02/20(木) 22:17:08.74 ID:
>>94
かずみんワロタwwwww
96:2014/02/20(木) 23:06:55.23 ID:
>>94
今野さん出来る男ハァハァww
98:2014/02/21(金) 00:04:14.45 ID:
「とても素晴らしい人材が揃っていて驚きましたわ。さすが乃木坂商事さん」
「ええ。我が営業第一部に出来ない奴は一人もいません。強いて言えば私ぐらいなもんですかね」
「ホンマに冗談がお好きなんですなぁ」
「出来る男は自分を出来ると自惚れません。自惚れているのは大概出来ない奴です」

ロビーの前で西野と他愛もない会話をしていた時だった。

「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


突然受付嬢が悲鳴を上げた。ふと振り返るとそこにはスーツを着た男がナイフを片手に持って立っていた。
よく見るとプロジェクトでやってきたメンバーと入れ替わりで第一部から弾き出された一人だった。

「おい平野。どうしたそんな物騒なもの持って」
「うるさい!おい西野!よくも俺の人生台無しにしてくれたなぁ!!」

奴は平野。プロジェクトで何度かパートナーになったこともある。エリート街道を疑いもなく突き進んできたエリート営業マン。
しかしそれに奢って仕事は特に出来なかった。なので今回弾き出された時は大きく驚くこともなかった。

平野は第一部からグアテマラ駐在所に異動が決まっていた。海外事業とは無縁の彼は左遷と判断して発狂したようだ。
エリート家系に生まれて育ち、挫折を知らない人間が初めてぶち当たった壁。
彼にはそれを乗り越える方法を考えず絶望を感じてヤケを起こした。

つまり彼はキャリアと同時にこの先の明るい人生まで捨て去ってしまったのだ。

「やめておけ。そんなことしたら一生台無しになるぞ」
「うるせぇ!そこにいる金持ちのクソ女が我儘言わなきゃ俺はエリートだったんだ!」
「それは違う。お前は遅かれ早かれ第一部にはいられなかった。それで彼女を逆恨みするのはお門違いだ。慶応出てるのにそんなことも分からないのか?」
「うるさいうるさいうるさーい!!!!」
益々発狂する平野。顔は真っ赤になり震える手でナイフを振り回していた。
そんな時西野が前に出る。

「…いくらや?」
「は?」
「いくら払えば納得してくれるんや?」
西野はそう言うと小切手を取り出してペンを右手に持った。

「てめぇ俺をバカにしてるのかぁ!?」
「あなたがそないなことしてるのはお金が欲しいからやろ。エリートの地位にいればたくさん金入るし」
「ちょっと西野さん。やめた方がいい」
「いえ。この方はお金が欲しいのと私のせいで何かを失ったと思っているんです。だったら代償を支払うまでです」
やはり生まれながらに金持ちの人間は違う。何でも金で済ませてしまおうと考える。
金を渡せば人は幸せになるとでも思っているのだろう。
だがそれは財力に一生困らない大金持ちの考え方だ。恐らく平野には通用しないだろう。

「てめぇやっぱぶっ殺してやるうううううううううううううううううううううう!!!!!!」
平野がナイフを向けてこちらへ突進してきた。
俺は言うまでもなく西野を抱いて右の方へ押し倒した。

その時一人の女性が速いスピードで駆けてきて履いていたハイヒールの先が平野の急所を直撃した。

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!!!」

平野は口から泡を吹いてその場に倒れこんだ。
ロビーには平野が持っていたナイフが落ちた音が響き渡っていた。
101:2014/02/21(金) 00:10:19.81 ID:
「誰か手を貸してくれ!」
「こいつ完全に伸びてるな~」

警察官が4人がかりで失神している平野に手錠をかけて持ち上げられてパトカーに乗せた。
それはまさにエリート街道を突き進んだ男が惨めな犯罪者に転落した瞬間だった。

「すみません。警視庁捜査一課の衛藤と申します」
「同じく若月です」

二人の黒いスーツを着た女性刑事が警察手帳を出す。
ドラマのように強面の男刑事から事情を聞かれるとは思っていたがまさかこんな女性から事情を聞かれるとは思わなかった。
警察も変わってきているようだ。


刑事から散々事情を聞かれたり実況見分に立ち会ったり何なりであっという間に昼が過ぎていった。
事件に巻き込まれるのがいかにいい迷惑か身を持って知った。


「ご協力ありがとうございました。最後に警視庁ではあなた方を表彰する意向とのことです。正式に決まりましたら連絡します」
衛藤刑事が俺と平野の急所に飛び蹴りを食らわせた堀にそう言って一礼して若月刑事と共に去って行った。

「表彰か。それにしてもやるじゃないか堀君。只者ではないとは思っていたが…」
「いえ。私はただ西野さんが大事なクライアントなのでお守りしたいという一心から本能で動いたまでです」
堀は真面目な表情を崩さずにその場を後にした。


「七瀬お嬢様。お迎えに上がりました」
北野が一礼してそう言うと西野は持っていたバッグを北野に渡して歩き出す。
俺はロビーを出て石段を下る。目の前には止まっている黒塗りのシボレー・タホ。
北野はトランクを開けて荷物を置くと、後部ドアを開けた。

「よろしければご自宅までお送りしましょうか?」
西野はパワーウィンドウを開けて誘う。

「いえ。僕はまだやることがあるので終わったら電車で帰りますよ」
「そうですか。では…」

西野はそう言うとウィンドウを閉め、タホがゆっくりと走り去っていった。
俺は何故かそのまま呆然と車が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
104:2014/02/21(金) 01:11:03.66 ID:
「ただいま~」
「お帰りったん(。・ω・)ノ゙」
「どうしたんだよ今日はやけに笑顔だな?何かいいことあったんか?」
俺はいつも以上にニコニコする真夏が気になった。
何だろう?福引でも当てたか?それともいい服でも買ったのか?

俺はリビングに入った時その理由を知る。

『本日正午頃東京丸の内にある乃木坂商事本社内にて刃物を持った男が玄関ロビーで暴れました…』

テレビでは今や乃木坂テレビの人気アナウンサーれなりんこと市來玲奈アナがあのニュースを読んでいた。
既に昼のニュースでも取り上げられており中で誰かが撮影していた動画が流れていたのだ。

「誰だよテレビ局に売った奴は…」
「それよりも凄いじゃない。刃物を持った男から女性を守ったんでしょ?それも相手は西野鉄鋼の社長の娘さんらしいじゃない」
「ああ。今俺がやってる仕事のクライアントだからな」
「え!?そうなのぉ。だって今朝もテレビに出てた超有名なセレブじゃない」
かなり興奮している。こんなにはしゃぐ真夏を見たのは去年家族でフロリダに行って以来だな。
だが、そこがまた惚れ込む理由でもある。

「今日は幼稚園の先生や母親からも言われて大変だったけど嬉しかったなあ」
「あの場で自分の身だけを守るようではダメだ。やはり真夏と春真がいたからこそ出来たことかもな」
「そんな自慢の旦那様にご褒美としてあなたの大好きなハッシュドビーフにしようと思うの。わざわざ駅前の肉屋で高いお肉買っちゃったわ」
「そんないいのに。それに褒美は後日警察から貰うことになるそうだ」
「えええええええええええええええ!!!凄いじゃない?あれでしょ?警視総監賞ってやつでしょ?テレビに出るの?」
「おいおいそんな大袈裟なもんじゃないだろ。感謝状一枚と記念品貰うだけだよ」

とにかく今日の出来事で我が家は誕生日や記念日を祝うかのようにささやかながらの贅沢を楽しんだ。
だが、その話をする度に俺の脳裏には西野の顔がちらついた。
105:2014/02/21(金) 01:12:05.82 ID:
俺が真夏と春真とで家族団欒を楽しんでいた頃、都心の街中を一台のトヨタクラウンアスリートが駆けていく。
運転席上部には赤色灯が置かれておりこれが覆面パトカーであることは誰の目から見ても分かる。
乗っているのはあの事件で事情聴取をした警視庁捜査一課の衛藤刑事と若月刑事だ。

「ねぇ若月。昼間の事件なんだけどさ」
ハンドルを握る衛藤が助手席でスマホを眺める若月に声を掛ける。

「あぁ乃木坂商事のヤツ?」
「何か引っ掛からない?」
「いや別にただエリートサラリーマンが左遷だって言ってヤケになって暴れただけの軽いヤマじゃん」
「だからよ。何で私たち一課が呼ばれたのかってことよ」
「ああ。そういえば。別に殺人とか強盗でもないのに…」
「これは私の刑事の勘なんだけどさ。キーマンはあの西野七瀬だと思うわけ」
「あの西野鉄鋼のセレブ様?」
「そう。自分が襲われたにも関わらずあの冷静沈着な表情。被害者とは思えないのよねえ」
「でもまあセレブってあんなもんじゃないの?どっかネジが緩んでるっていうか…」
「いやいや。それは違うなあ。所轄時代からずっと色んな事件見たけどあんな表情の当事者は初めてだった」
「じゃあ何なの?」
「そりゃ分かんないけどもしかしてあのお嬢様。こうなることを予め知ってたんじゃないかなって思えてさ」
「ちょっ。みさ先輩らしくもない。そんな自分が襲われるの仕組むとか有り得ないっしょ?」
「有り得ないことをやるような雰囲気はあったよ。あんたそういうところ鈍感だからダメなのよ」
「う~ん。なんか違うような気がするけどなぁ」
若月は首を傾げる。しかし、衛藤は疑いを持たずにいられないようだ。

『警視庁より入電中。港区台場のお台場臨海公園内にて男性が血まみれで倒れているとの通報。付近にいる車両は至急急行せよ』

「ほらみさ先輩。事件は次から次へと起きるんだからそんなの気にせず今はこれに集中集中」
「そうね。さぁて今日も長い夜になりそう。あ~お肌に大敵だぁ」
二人の乗ったパトカーは赤色灯を光らせてサイレンを夜の街に響かせ走って行った。
106:2014/02/21(金) 01:13:37.07 ID:
場面は変わり、レインボーブリッジを芝方面へ進むのは西野が乗っている黒塗りのシボレー・タホだ。

「もしもし…。そう。ありがとう。ええ。約束は必ず守るわ。それじゃ…」
スマホの画面をタッチしてバッグに入れる西野。隣には堀が座っていた。

「全くあなたも人が悪いお方ですね」
「そんなのは知ったうえで付き合ってるんとちゃう?」
「それはそうですけど…今回のやり方はいかがかと」
「ええやん。これで彼も私の存在が気になってきているはずや」
西野はそう言うとスケッチブックと鉛筆を取り出して何かを書き始めた。
堀は持っていた『高賀の森水』と書かれたペットボトルの水を一口飲む。

「お嬢様。この後はどちらに行かれますか?」
北野が助手席から西野に尋ねる。

「せやなあ。じゃあ代官山の『ビストローネ・ド・マイヤン』へ行ってや」
「かしこまりました。矢田。頼むわね」
「お任せください。早めに着けるようにします」
「頼んだで。あっそういえばりしゃこは乃木坂グルカー女学院を出ているんやって?」
「はい。そうですけど…」
矢田に尋ねた西野は笑みを浮かべて昨夜堀から受け取った俺の社員ファイルを見る。

「思った通りや。あんた先輩に真夏っていう人知らへんか?」
「え?ま、真夏さんですか?知っているも何も私がいた調理部の先輩ですよ。でも何故?」
「ええんや。こっちの話や。今のことは忘れてりしゃこは運転に集中してや」
「か、かしこまりました」

「七瀬さん。またあなた何かを企んでいるみたいですね」
「やっぱ堀ちゃんには分かってしまうんやなあ」
「当然です。あなたを追ってここまで来て無茶もしてきたんですよ」
「ほんまに堀ちゃんには感謝しとるよ」
「本当にそう思っていらっしゃるようなら少しはリスクも考えて行動してください。毎回心臓が持ちませんよ」
「せやな。次はもうちょい安全にやるわ」

様々な疑問や企みが交錯する夜が明けるにはまだ少し時間を要するようだ。
107:2014/02/21(金) 01:15:16.63 ID:
とりあえず朝早いんで今日はここまで
明日も夕方頃にあげていきたいと思うのでお付き合いいただける方は是非

では登場人物一覧を更新して寝ます
ではではおやすみったん(。・ω・)ノ゙
108:2014/02/21(金) 01:20:33.48 ID:
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

【西野家】
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩


【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕される

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい

【コンビニ】
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員

【警視庁捜査一課】
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている

【乃木坂テレビ】
市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん